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2023-12-08
点鼻薬の種類と使い分け-内服薬とどちらを選ぶべき?使用時の注意点は?<登録販売者向け>
・Before
・After
点鼻薬はステロイドや抗ヒスタミン薬など成分の違いで数種類に分けられます。それぞれにメリットとデメリットがあるため、お客さまの症状に合わせて使い分けましょう。本記事では、成分ごとの特徴や販売時に注意すべき事項などを具体的に解説。点鼻薬は花粉症やアレルギー性鼻炎などで需要の高い医薬品のため、シーズンの際はぜひ参考にしてください。
点鼻薬の種類
目薬の種類は成分の違いで上記の4つに分けられます。
それぞれどんな特徴があるのか見ていきましょう。
ステロイド点鼻薬
ステロイド剤は、鼻粘膜の炎症を抑えることによって、「鼻水」「くしゃみ」「鼻詰まり」の3大症状に効果を発揮します。
アレルギー性鼻炎だけでなく、寒暖差や自律神経の乱れによって起こる「血管運動性鼻炎」という慢性鼻炎にも使用可能。
効果が出るまでには少なくとも12時間はかかるため即効性があるとは言えませんが、1日1回の点鼻で1日効果が持続します。
また、副作用が少ないこともメリットです。
点鼻薬は局所的に効果を発揮し、全身に吸収されづらいため、ステロイドに抵抗のある方にもお使いいただけるでしょう。
抗ヒスタミン点鼻薬
抗ヒスタミン点鼻薬は、内服薬でも使われる成分を液状にした点鼻薬です。
アレルギー症状である鼻水とくしゃみを止める効果には長けていますが、鼻詰まりに対する効果は全般的に弱めです。
他の内服薬や点鼻薬と比べると効果がやや落ちるため、補助的な使われ方をすることが多い薬剤でしょう。
ステロイドと比較して即効性はありますが、眠気が出ることがあるため注意が必要です。
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血管収縮薬
血管収縮薬は、鼻粘膜の血管を収縮させて腫れを抑え、鼻づまりなどを改善する薬剤です。
市販の鼻炎点鼻薬のほとんどには血管収縮剤が含まれています。
この血管収縮薬で注意したいのが、長期間使用を繰り返すことで、鼻の粘膜が腫れる「薬剤性鼻炎」になってしまうということ。
もともとの鼻炎に血管収縮薬による鼻炎が加わり、より重い状態になってしまいます。
感覚としては、長期間使用すると次第に効き目が小さくなるように感じられるでしょう。
そのため血管収縮剤は使用するとしても、使用期間は1~2週間にとどめなければなりません。
ただ、血管収縮薬は使用してから5~15分で効果を発揮するため、即効性を求める人にはとても有効な薬剤です。
しかし、有効時間は8時間程度と短め。
大事な会議前や試験前などのここぞというときの使用を促しましょう。
ケミカルメディエーター遊離抑制薬
ケミカルメディエーターとは、アレルギー症状を誘発する物質のことで、ヒスタミンも含まれます。
抗ヒスタミン薬が、放出されてしまったヒスタミンが効果を発揮するのを防ぐ一方で、ケミカルメディエーター遊離抑制薬はヒスタミンなどの物質が放出されるのを防ぐ役割を果たします。
ケミカルメディエーター遊離抑制薬は眠気などの副作用が比較的少なく、連用することで改善率が上がるという特徴があります。
そのためアレルギー性鼻炎に使用されていましたが、効き目がマイルドであるため現在はあまり使用されていません。
単剤での点鼻薬はなく、配合されることが多い成分です。
【症状別】点鼻薬の使い分け
症状 | 使用される点鼻薬 |
---|---|
一年中アレルギー性鼻炎がある | (鼻噴霧用)ステロイド点鼻薬 |
鼻粘膜炎症が強い | (鼻噴霧用)ステロイド点鼻薬 |
一時的なアレルギー反応 | 抗ヒスタミン点鼻薬 ケミカルメディエーター遊離抑制薬 |
花粉症 | 抗ヒスタミン点鼻薬 ケミカルメディエーター遊離抑制薬 (鼻噴霧用) ステロイド点鼻薬 |
風邪 | 血管収縮薬 |
鼻詰まりがとてもひどい | 血管収縮薬 |
連続使用の上限は、ステロイドが1~3ヵ月(年間)、血管収縮薬が1~2週間となっています。
抗ヒスタミン薬に関して、使用上限は明確に定められていませんが、2週間程度使用して改善を認めない場合は、ステロイド点鼻や内服治療にスイッチすることも検討する必要があります。
ステロイドは、初期から重症例まで推奨されている薬剤のため使いやすいですが、即効性を求める場合は抗ヒスタミン薬が良いでしょう。
血管収縮薬は短期的に使用する場合に適しています。
点鼻薬と内服薬のどちらを選ぶべき?
点鼻薬は鼻の粘膜に直接はたらきかけて局所的に効果をもたらしますが、内服薬の効果は全身に及びます。
したがって、使用する場面や症状に合わせて点鼻薬か内服薬かを選ぶようにしましょう。
一般的には、花粉症も通年性のアレルギー性鼻炎も抗ヒスタミン薬を内服し、カバーしきれない鼻炎症状に対して点鼻薬を上乗せで使用します。
内服薬と点鼻薬を併用した方が効果的に症状を抑えられることもあるため、症状にお困りのお客さまがいたら点鼻薬の追加もおすすめしても良いでしょう。
また、鼻炎の症状のみが辛いという場合は、最初に点鼻薬を選択することも可能です。
点鼻薬の使い方
必ずそれぞれの点鼻薬についている説明書を読むよう案内してください。
こちらでは接客の参考までに、代表的な使い方を説明します。
- 軽く鼻をかむ
- 容器をよく振る
- 片方の鼻孔をふさぎ、他方の鼻孔内に容器の先を入れ、滴下する
もしくは息を軽く吸いながら噴霧する - 頭を後ろに傾けて数秒間鼻で静かに呼吸して、薬液を鼻の奥へ行き渡らせる
- 反対の鼻孔も同様にして噴霧と呼吸を行う
- 規定の回数の噴霧が終わったら容器の先端をきれいに拭き、蓋をする
噴霧器の種類によっては、開封後に予備噴霧を指定の回数行い、正常に噴霧されるのを確認しなければなりません。
お客さまが正しく薬剤を使用できるように、事前に説明書をよく確認しておきましょう。
また、使用回数や使用期間を守ること、起こりうる副作用などを説明し、症状がよくならない場合は医師や薬剤師に相談するように促すことが大切です。
点鼻薬を使用する上での注意点
抗ヒスタミン点鼻薬:眠気が出る場合がある
血管収縮薬:だんだん効かなくなるため、長期連用はしない
ステロイド点鼻薬は、1日1回点鼻することが大切です。
即効性はありませんが、数日間使用し続けていると鼻炎症状は改善します。
抗ヒスタミン点鼻薬は内服薬と同様に眠気が出ることがあるため、使用タイミングに注意しましょう。
血管収縮薬は効き目が良く、効果を実感しやすいため手放せないと感じる人も多い成分です。
しかし、少なくとも1カ月連続して使い続けると、鼻粘膜の自律神経のリズムが崩れる原因になるため注意が必要です。
その場合、徐々に点鼻回数・使用量を増やさなければ鼻詰まりが解消しない状態になります。
さらに乱用を続けることで「薬剤性鼻炎」という慢性の鼻詰まり(鼻閉)が起きることもあるので注意しましょう。
お客さまへ説明するときは、使用回数や期間だけでなく、血管収縮薬が鼻炎を引き起こす可能性があることを必ず伝えてください。
<対応例>点鼻薬についてお客さまから質問されたときは
鼻炎症状に悩むお客さまへの対応例を紹介します。
接客時の参考にしてください。
◆人物データ
・年齢:20代男性
・職業:大学生(就活中)
・既往症:花粉症
・服用中の薬:抗ヒスタミン内服薬
・アレルギー:なし
・悩み:花粉症対策で市販薬の抗ヒスタミン薬を内服しているが、鼻詰まり症状がひどくよく眠れない。就活の面接が数社控えているため、なんとか症状を改善させたい。
お客さま:
今、抗ヒスタミン薬の錠剤を毎日飲んでいるのですが、鼻詰まりの症状がひどくて困っています。面接も控えているので、もっと効く薬を探しています。
登録販売者:
鼻詰まり症状は睡眠にも影響しますし、早く治したいですよね。
抗ヒスタミン薬はくしゃみや鼻水には効果があるのですが、鼻詰まりの症状改善効果は少し弱いというデメリットがあります。鼻詰まりを早く解消させるためには、他の成分を試してみると良いと思いますよ。
他の成分だと、どちらも点鼻薬ですが、ステロイド点鼻薬か血管収縮薬があります。ステロイドだと、即効性はありませんが、年間で3カ月使用できるものがあります。血管収縮薬は使用してから5分で効果を実感できますが、効果は一時的で8時間程度ほどです。こちらは連用しすぎると薬剤性鼻炎というやっかいな鼻炎を引き起こすリスクがあるため、使用期間は1~2週間と捉えておいてください。
どちらも点鼻薬ですが、使用方法は簡単ですよ。
お客さま:
使える期間が違うってことですね…。まだまだ就活は長引きそうなので、ステロイドの方を試してみようかと思います。なんだか副作用が怖いイメージがあるのですが、大丈夫なのでしょうか?
登録販売者:
たしかにステロイドは副作用も多いと言われていますが、あくまでも高用量を内服した場合のことです。点鼻薬は局所的に成分が作用して、全身に成分は行き渡りづらいため、副作用の心配はあまりありません。
お客さま:
そうなのですね。では、ステロイド点鼻薬をお願いします。
ちなみに、もしあまり効かなかったときに血管収縮薬に切り替えることは可能ですか?
登録販売者:
もちろん可能です。血管収縮薬は、抗ヒスタミン薬と配合されていることがほとんどですが、ステロイドとの配合薬もございます。面接前など、ここぞというときにピンポイントで使うことも可能ですよ。ステロイド点鼻薬をしばらく使ってみて効果がいまいちと感じた場合は、また相談にいらしてください。
接客のポイント
- 成分の強み、弱みを伝える
- ステロイドは怖い薬ではないことを伝える
- お客さまの治療期間の目標を把握して適切な薬剤を選択する
抗ヒスタミン薬、ステロイド、血管収縮薬には得意・不得意があります。
鼻炎の3大症状のなかでお客さまがどんなことに一番困っているかヒアリングし、適している成分を選びましょう。
ステロイドに悪いイメージを持っている人は数多くいるため、抵抗感のある人に対しては、正しい情報を伝えて薬剤選択の幅を狭めないようにすることが大切です。
点鼻薬は使用期間が決められていることが多いため、お客さまがどれくらいの期間で治療を進めていきたいかを確認しなければなりません。
点鼻薬の種類に関するQ&A
点鼻薬に関してよくある質問をまとめました。
ぜひ参考にしてみてください。
Q. 春・秋の花粉症におすすめの点鼻薬は何?
花粉症には、ある程度の期間使い続けることで効果が得られるステロイド点鼻薬がおすすめです。
子どもでも使えて副作用も少ないこともメリットの一つ。
花粉が飛散する前から使い始めることが、効果を上げるポイントです。
Q. 花粉症のピークは何月?
春花粉のスギやヒノキは5~6月まで、ブタクサやヨモギに代表されるキク科の花粉は10月頃まで飛散します。
また、北海道ではシラカンバ属が5~6月にピークを迎え、イネ科は6~9月に飛散します。
ただし、地域や天候、気温に応じて差があるため、花粉予防はお住まいの地域の状況に適した時期から始めましょう。
Q. 寒暖差アレルギーと風邪の違いは?
寒暖差アレルギーは、気温差が1日のうちで7度以上ある場合に引き起こされやすい症状で、医学的には「血管運動性鼻炎」と呼ばれます。
温度差が刺激になり、鼻の血管が広がり粘膜が腫れることで、水っぽい鼻水が出るなどの症状が発生します。
一方で、風邪は、免疫力低下などで、ウイルスに感染し引き起こされる体調不良。
鼻水は黄色みがかっていて、粘り気があり、微熱があることが多いのが特徴と言えます。
寒暖差アレルギーには、抗ヒスタミン薬やステロイドの点鼻薬を用いることが可能です。
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点鼻薬をご案内する際は、それぞれの成分の特長をしっかりと説明しましょう
点鼻薬の成分には、鼻水やくしゃみなどの症状に対して副作用のリスクが少なく使えるステロイド、即効性が期待できる抗ヒスタミン薬、鼻詰まりに瞬時に効く血管収縮薬があります。
それぞれ使用期間を守ることが大切です。
使用上の注意事項や副作用のリスクなどをしっかりと伝え、お客さまそれぞれの症状や使用状況に合った医薬品を提案しましょう。
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