<登録販売者向け>防風通聖散はダイエット効果がある? 飲み方や効果が出るまでの期間、注意点など【薬剤師に学ぶ医薬品知識】

防風通聖散の効果:お腹周りの皮下脂肪が気になる人におすすめ

防風通聖散は脂肪代謝を改善し、体に溜め込まれている脂肪を減少させるのに効果的な漢方薬です。

比較的体力があり、お腹周りに皮下脂肪がつきやすい人に向いています。

暴飲暴食などで溜まった体の余分な熱を取り除き、水分代謝や血流改善を促すことで、汗や便として余分なものを排泄してくれます。

では、具体的には、どのように作用しているのでしょうか?

脂肪の燃焼

防風通聖散は18種類の生薬から成り、脂肪の分解･燃焼を促進させる働きを持つ漢方薬です。

中でも山梔子(サンシシ)や麻黄(マオウ)といった生薬には、脂肪細胞を活性化させる役割があります。

とくに脂肪がつきやすいお腹周りや太ももなどへの効果が期待できるでしょう。

私たちの体には、余分なエネルギーを脂肪として蓄える「白色脂肪細胞」と、脂肪を燃焼させる「褐色脂肪細胞」があります。

防風通聖散には、この白色脂肪細胞を小さくし、褐色脂肪細胞を活性化する生薬が配合されているため、皮下脂肪の多い方の脂肪燃焼に使われています。

さらに防風通聖散には、余分な脂肪が体内に蓄積しないように、脂肪の吸収を抑えて脂肪の排出を促す作用も期待できます。

便秘の解消

防風通聖散に含まれる大黄(ダイオウ)や芒硝(ボウショウ)などの生薬には、便秘解消効果が期待できます。

大黄は「乾かす」役割、芒硝は「潤す」役割を持っており、ともに便を出しやすくする生薬です。

さらに大黄は、腸を刺激して過剰なものを捨てる瀉下剤(下剤)としての役割もあります。

ただ腸を刺激して蠕動運動を促すだけでなく、便をやわらかくして排泄させるようため、老廃物のデトックス効果も期待できるでしょう。

大黄と芒硝の組み合わせによる便通改善効果は強いといわれています。

そのため、下痢体質の人が服用すると下痢の症状が助長される可能性があるため、お客さまに販売する際は注意が必要です。

その他に期待できる効果

防風通聖散には他にも、血の巡りを改善し解熱を促す効果が期待できる川芎(センキュウ)や、利尿作用がある滑石(カッセキ)･白朮(ビャクジュツ)が含まれています。

血行促進と利尿作用により、むくみやのぼせ、動悸、肩こりの解消にもつながるでしょう。

また、内臓脂肪が多いと血圧が上がりやすくなりますが、防風通聖散には内臓脂肪を落とす役割があるため、高血圧改善効果も期待できます。

さらに、甘草(カンゾウ)や桔梗(キキョウ)には鎮咳や去痰作用も。

防風通聖散は漢方薬の世界では排膿薬に分類され、蓄膿症に使用されることもあります。

防風通聖散で痩せられる理由

防風通聖散の服用によりダイエット効果が期待できる理由は、以下の通りです。

防風通聖散に含まれる生薬は、それぞれ「発汗」、「利尿」、「便通」、「解熱」の役割を担っています。

服用することで脂肪の分解･燃焼効果が期待でき、食事で摂取した余分な脂肪が体に蓄積するのも予防してくれるのです。

さらに、新陳代謝を高めることで発汗を促し、便通をよくすることで老廃物や体内にこもった熱、脂肪を排出する働きもあります。

以上の流れにより、防風通聖散を飲むことで痩せる効果が期待できるでしょう。

過度なダイエットには注意

防風通聖散は、飲めば痩せる薬ではありません。

痩せたいからといって防風通聖散の効果にだけ頼ったり、極端な食事制限や激しすぎる運動を行ったりするのは危険です。

効果的なダイエットを行うためには、防風通聖散を正しく活用し、暴飲暴食を避けバランスのとれた食事をすること、適度な有酸素運動を取り入れることを心がけましょう。

防風通聖散の効果は人によって異なるため、なかなか痩せない場合は医師に相談してみることをおすすめしてください。

防風通聖散の飲み方について詳しくはこちら

防風通聖散の効果が出るまでの期間:2週間〜1ヶ月

防風通聖散の効果を実感できるまでは、服用を開始してから2週間〜1ヶ月程度かかるといわれています。

女性の場合は生理期間中に体重の増減があるため、生理の前後を含まない期間で観察したほうがよいでしょう。

防風通聖散の服用開始から2週間程度で、むくみや便秘、肌荒れの改善や体脂肪の減少効果を得られます。

1ヶ月ほど飲み続けると、肩こりやのぼせの解消、蓄膿の改善といった効果を実感できるでしょう。

しかし、体質に合わないと効果が出ないこともあります。

とくに冷え性や虚弱体質の方には向いていない漢方ですので、1ヶ月以上服用しても効果が見られない場合は、他の方法を試すのがよいでしょう。

防風通聖散の考えられる副作用

防風通聖散に、重篤な副作用はほとんどありません。

しかし、人によって体に合わなかったり、長期で大量に服用することで副作用が生じたりする可能性があります。

また、配合されている「甘草」や「麻黄」が他の漢方と重複しないように注意も必要です。

まれに起こる副作用の特徴を知っておきましょう。

下痢や吐き気

防風通聖散には、大黄や芒硝などの腸に働きかけて便通を改善する生薬が含まれているため、下痢や吐き気といった消化管症状の副作用が起こることがあります。

水様便や吐き気などの症状が続く場合、体質に合っていない可能性があるため、お客さまには服用を中止し、医療機関へ相談することをすすめましょう。

肝臓機能の異常

防風通聖散の服用によって、まれに肝臓機能に異常をきたす場合があります。

肝臓は代謝や解毒を担う臓器です。

防風通聖散を含めたすべての医薬品やサプリメントにいえることですが、服用によって肝臓に負担がかかって炎症を起こし、幹細胞が壊れる薬物性肝障害が起こる可能性があります。

肝機能障害が起こると、発疹、黄疸、褐色尿、倦怠感、食欲不振などの症状があらわれる場合が多いです。

お客さまからこのような症状について相談を受けた場合は、すぐに医療機関を受診するよう促してください。

頭痛や発熱

防風通聖散の服用によって頭痛や発熱といった副作用が起こることがあり、重篤な場合は間質性肺炎を招く可能性があります。

間質性肺炎は、肺が硬くなって呼吸がしづらくなったり、咳が出たりする病気です。

頭痛、発熱に息苦しさや、呼吸がしづらい、から咳などの症状が複数見られた場合にはすぐに医師の診察を受けるようすすめてください。

防風通聖散の飲み方

漢方薬の服用は、薬が吸収されやすい空腹時に飲むのがよいとされています。

用法の食前とは、食事のおよそ30分前のこと、食間とは食事の約2時間後のことです。

防風通聖散の効果を最大限に引き出し、副作用のリスクを軽減するためにも、各メーカーが定めた正しい飲み方を守って服用するようご案内してください。

防風通聖散を服用する際の注意点

防風通聖散は痩せ薬として知名度が高いですが、すべての方に効果がある漢方薬ではありません。

とくに長期服用や虚弱体質の方、妊娠中･授乳中の方が服用する場合は要注意です。

長期服用

1ヶ月以上継続しても症状や所見の改善が見られない場合は、体質に合っていない可能性が考えられます。

お客さまには、継続投与は避けるように促しましょう。

防風通聖散の使用にあたっては、証を十分考慮して経過観察を行う必要があります。

飲めば飲むほど痩せる薬ではないため、漢方医学の考え方を考慮して適正に使用することが大切です。

また、防風通聖散は山梔子を含有しているため、長期使用による大腸の色調異常や浮腫、びらん、潰瘍、狭窄を伴う腸間膜静脈硬化症などがあらわれる可能性があります。

長期服用しているお客さまから相談されたときは、定期的にCTや大腸検査を行うこともあわせてご案内しましょう。

妊娠中･授乳中の服用

妊娠中･授乳中の方には、基本的に防風通聖散の販売を控えましょう。

防風通聖散に含まれる大黄や芒硝には、骨盤内臓器の充血作用や子宮収縮作用があると報告されています。

流早産の危険性が高まるため、妊娠中は使用を控えるべきです。

どうしても使いたい場合は、医師の指示のもと慎重に検討してください。

また、授乳中に防風通聖散を服用した場合、大黄の中のアントラキノン誘導体 が母乳中に移行する可能性があります。

乳児の下痢を引き起こすことがあるため、接客時は慎重に対応しましょう。

虚証体質の方の服用

防風通聖散は「実証」の方に適した漢方薬のため、「虚証」の方におすすめするのは控えましょう。

漢方の世界にはその人の体力や抵抗力を示す「証」という考え方があり、「虚証」と「実証」の2つに分けられます。

「虚証」とは、抵抗力が弱く胃腸が弱い、下痢をしやすい、華奢、疲れやすいなど虚弱な体質の方のことです。

一方「実証」は、体力や抵抗力が充実している方を指します。

虚証体質の方や冷え性、胃腸が弱い方が防風通聖散を服用すると、体力が十分にないために下痢などの副作用が起こりやすくなるのです。

服用を続けることで症状の悪化も懸念されます。

また、重度の高血圧や腎障害･肝障害、甲状腺機能亢進症、多汗症の治療を受けている人も要注意です。

防風通聖散を販売する際は、お客さまの健康状態や基礎疾患の有無に注意を払いましょう。

市販の防風通聖散の選び方

市販の防風通聖散は、種類によって生薬の配合量や価格、剤形が大きく異なります。

それぞれの特徴を知ったうえでお客さまのご希望を伺い、適した商品をご案内しましょう。

配合量で選ぶ

防風通聖散をはじめ漢方薬は、日本薬局法で種類ごとに配合できる薬草の量が定められています。

「満量処方」は日本薬局法で定められた最大量の生薬を配合したもの、「半量処方」は同じ承認基準内の半分量の生薬を配合したものです。

さらに、満量･半量以外の分量のものもあります。

丁寧にヒアリングをして、お客さまに合うものをおすすめしましょう。

配合量により用法･用量なども異なるため、しっかり把握してご案内してください。

価格で選ぶ

防風通聖散の選び方として、お客さまにとって使いやすい価格の商品をご案内することも重要です。

防風通聖散の効果の発現には個人差があり、早くても2週間から1ヶ月程度の時間がかかります。

服用の継続にて効果を持続させたい場合は、定期的に購入しても無理のない値段のものを選びましょう。

どれを購入するか悩んでいるお客さまには、1ヶ月あたりでどの程度の価格で継続できるかを伝えてみるのもおすすめです。

剤形の種類で選ぶ

防風通聖散には、錠剤、顆粒剤、散剤などいくつか剤形の種類があるので、お客さまに合ったタイプをおすすめしましょう。

すぐに吸収されて高い効果が期待できるのは散剤や顆粒剤ですが、漢方薬特有の風味を感じやすい欠点があります。

そのため、味が合わず飲めない方には錠剤を用いることを提案してみましょう。

錠剤を使用する場合には、そのお客さまの嚥下能力や1回量の錠数なども確認してください。

<対応例>防風通聖散を求めて来店されたお客さまへの対応

接客のポイント

防風通聖散は飲めば痩せるわけではなく、運動や食事制限を並行して行うことで脂肪燃焼や便通改善効果が期待される薬剤です。

体質による向き･不向きもあります。

接客の際は、防風通聖散についての正しい情報や向かない体質の人がいることをしっかりと伝えたうえで、お客さまの要望にも耳を傾けながらご提案しましょう。

防風通聖散の市販薬の種類は多く、処方量も製剤によって異なるため、成分量まで注意して販売してください。

防風通聖散の生薬は独特の風味があるので、味が苦手な人には錠剤をおすすめしてみましょう。

しかし、剤形の種類は吸収の速さや嚥下の状況などを考慮して決めるため、患者さまの背景をしっかりとヒアリングする必要があります。

また、お客さまの体質や基礎疾患の有無によっては、防風通聖散をおすすめできない場合もあります。

ダイエット効果を高めるために漢方薬を服用したいが虚弱体質である、という方には「防己黄耆湯」の提案も考慮してください。

同じように肥満症への効能がある漢方薬ですが、「虚証」の方に向いています。

薬ですので、副作用が発現する可能性も踏まえて、安易に満量処方をすすめることは危険です。

妊娠･授乳の有無や虚弱体質･高齢であるか、併用薬や基礎疾患などを確認しましょう。

万が一、防風通聖散の服用後に「体質に合わない」との申し出があった場合は、服用の中止を指示してください。

そのうえで、虚弱な体質向けの別の漢方薬についてもご案内するとよいでしょう。

防風通聖散に関するQ&A

防風通聖散のダイエット効果は、あくまでも間接的なものです。

ダイエットに活用する際の注意点や飲み合わせで気をつけたいことをQ&Aでまとめたので、お客さまへのご案内に活かしてください。

Q防風通聖散を飲んでいればダイエットに成功しますか?

防風通聖散をはじめとする漢方薬は、ダイエットではなく、内側からの体質改善を目的として作られています。

ダイエットを成功させるためには、必要に応じた食事制限や運動を取り入れることが大切です。

また、体質に合う人が正しく使うことで、食欲増進ホルモンの減少 によって少ない量の食事でも満足できるようになるでしょう。

Q食前や食間に飲み忘れたときはどうすればいいですか?

下記の点に注意して服用しましょう。

次の服用までに5時間以上の間隔がある場合は、飲み忘れに気づいた時点ですぐに服用しましょう。

もし、次の服用のタイミングが2時間以内であれば、飲み忘れた分は1回飛ばして、次の服用から開始すれば大丈夫です。

絶対に2回分をまとめて服用してはいけません。

1回で多く服用し過ぎると、急に薬剤の血中濃度が上昇して副作用が起こる危険が高まります。

Q防風通聖散と飲み合わせの悪いものはありますか?

とくに、下記のような薬剤との飲み合わせは、副作用が起こる可能性が高まるため併用は避けましょう。

麻黄には発汗作用、鎮咳作用、抗炎症作用があるために、風邪薬や咳止め、喘息の治療薬など多くに含まれています。

また、甘草という生薬も毒性を緩和し、他の生薬の効果を高める作用があります。

多くの製剤に含まれているため、これらの重複に注意が必要です。

防風通聖散を上手に使えば、体質改善も期待できる

防風通聖散には、汗や便などと一緒に毒素や老廃物を出して新陳代謝を高める、脂肪燃焼を促進する、脂肪の吸収を抑制するなどの作用があります。

飲めば痩せる痩せ薬ではありませんが、効能･効果をしっかり理解して適切に使用することで、生薬の作用で血流が促進され、代謝のアップも期待できるでしょう。

防風通聖散に限らず漢方薬は、「証」に合っていないと効果が出ないだけでなく、副作用も起こりやすくなります。

たくさんの漢方薬の中からその人に合ったものを選ぶことは大変ですが、それを見極めることが何よりも大切であり、やりがいのあることです。

それぞれの生薬の役割や特徴を知り、お客さまの体質にあったものを選びましょう。

「チアジョブ登販」は、登録販売者の資格を活かせる求人を集めた転職サイトです。

漢方の知識をより高め、活かせるような求人も掲載していますので、転職を検討中の方はぜひご覧になってください。