プロフィール
公益財団法人日本ヘルスケア協会
会長 今西 信幸さま
1970年に東京薬科大学を卒業。1990年に東京医科大学で博士号を取得し、2011年には東京薬科大学の理事長に就任。2016年に日本ヘルスケア協会の一組織である日本ヘルスケア学会の会長となったのち、2017年より同協会の会長に就任した。2018年からは日本チェーンドラッグストア協会事務総長も務める。
著名人コラム
2022-12-09
・Before
・After
医療業界やドラッグストア業界を牽引する企業、経営者・専門家などへの特別インタビュー企画が始動!登録販売者ならではのキャリアの悩みやドラッグストア業界の未来を紐解くべく、第1回目となる今回は、ヘルスケア領域の先導者・公益財団法人日本ヘルスケア協会の今西会長にお話を伺いました。今西会長はヘルスケアを「『やらざるを得ない』国のミッション」だと熱く語ります。今西会長が考える、登録販売者の役割の変化や差別化とは?モチベーションアップに役立つ、「ここだけの話」をお届けします。
公益財団法人日本ヘルスケア協会
会長 今西 信幸さま
1970年に東京薬科大学を卒業。1990年に東京医科大学で博士号を取得し、2011年には東京薬科大学の理事長に就任。2016年に日本ヘルスケア協会の一組織である日本ヘルスケア学会の会長となったのち、2017年より同協会の会長に就任した。2018年からは日本チェーンドラッグストア協会事務総長も務める。
当協会では、ヘルスケア推進のための研究や協議活動などを行っています。
まず、私たちがヘルスケアに力を入れている理由からご説明しましょう。
日本の医療保険制度※は世界と比較して公平で優れている一方、超高齢社会のなかでこの制度を維持していくためには、予防やヘルスケアを進めていくことが必要不可欠だと考えています。
つまり、「日本の健康を守るためのシステムをどうするか」という根源的な問題です。
※医療保険制度…「健康保険」「国民健康保険」「後期高齢者医療制度」など、国民が病気やケガをした場合に国がその医療費の一部を負担する制度
わかりやすく言うと、15歳〜65歳の就労者は財政面で「制度を支える人」で、65歳以上が「支えられる人」です。
少子高齢化が進んでそのバランスが崩れてきていることを認識している方は多いと思いますが、一方で、結果として具体的にどうなるかを理解している人は少ないのではないでしょうか。
まず医療保険制度の仕組みにおいて、1970年代には65歳以上の「支えられる人」1人に対して「支える人」が9.8人いました。
それが2015年になると「支えられる人」1人に対して「支える人」2.3人になり、2050年になると「支える人」は1.3人まで減少することが見込まれています。
このことから、「支える人」の負担はその期間でおよそ7.5倍になるとわかるでしょう。
▲公益財団法人日本ヘルスケア協会の作成資料より抜粋(2019年5月作成)
少子高齢化・超高齢社会のなかで医療費が増大し続ければ、医療保険制度は成り立たなくなります。
それを防ぐために、病気にならないように努力する必要があります。
そこで求められるのが、「予防」「ヘルスケア」「フレイル対策」です。
当協会のロゴには、男女の平均寿命と健康寿命が掲載されていますが、現在、男性の健康寿命は72.68歳で、平均寿命は81.64歳。
つまり、寝たきりになって約9年間で死にいたるわけです。
一方、女性では12年となっています。
▲公益財団法人日本ヘルスケア協会のロゴマーク(2019年5月作成)
健康寿命と平均寿命の差をなくすことで、医療費を確保しつつ、皆さんの老後を幸せなものにできるのです。
その通りです。
ヘルスケア産業が生まれてから、2022年で約10年が経ちました。
これまでの医療は「治療」が中心でしたが、今後は「予防」に注力しないと現行の制度を維持できません。
ヘルスケアは「必要」なのではなく、もはや「やらざるを得ない」国のミッションなのです。
医療が担う役割の中心が治療だとすると、ヘルスケアは予防の中心を担います。
通常「健康」について考えるとき、治療や薬の話になりがちですが、予防の段階で最も大事なのは「食」です。
本来、行政における食の分野は農林水産省、医療は厚生労働省の管轄です。
またアニマルセラピーなど心の療養ですと、動物・ペット関連のため環境省になります。
そのため、予防を考えると省庁間の連携も必要になってきます。
同様に薬局とドラッグストアの機能を考えると、薬局は原則的に薬剤師しかいませんが、ドラッグストアには薬剤師に加えて、登録販売者、栄養士もいます。
どちらが良いかという話ではありませんが、ヘルスケアに焦点を当てた場合、生活者は多機能の方に流れていくでしょう。
登録販売者は、OTC医薬品の知識をもった方々ですよね。
薬剤師と医薬品の知識で競うのではなく、薬剤師にはない栄養学的な知識を補完していったら良いのではないでしょうか。
ヘルスケア・予防の観点において、栄養学的知識は重要です。
病気の予防を考えると、お客さまの悩みや不安は食事や睡眠に関する内容が多くなりますよね。
なので、登録販売者の未来を考えると、薬剤師に準ずるのではなく、他分野の知識をプラスするのが良いと思います。
また、お客さまの多くが医療業界以外の方でしょう。
その点で、登録販売者のほうがお客さま目線でわかりやすい説明ができると思います。
総じて、「どうしたらお客さまの役に立つか」ということを、常に考えないといけないわけです。
お客さまから相談を受けた際、一方的に「こうです」とそれまでの薬学的知識や経験で答えるのではなく、ヒアリングしたニーズと具体的にどうすり合わせるのかが大事になります。
登録販売者の資格を最大限に活かすためにどうすべきかを真摯に考えて、それに合った行動をとっていくと良いでしょう。
登録販売者を「一般の人の視点をもった薬学的知識のある人」ととらえるとわかりやすいでしょう。
さらにプラスアルファで他分野の知識をもったら市場価値は格段に上がります。
そうですね、さまざまな分野の商品が揃うドラッグストアで働くなかで、薬のことしかわからない状態のままで良いとは言えないでしょう。
専門知識があれば、「夜眠れない」という悩みに対して、「睡眠薬」「運動」「枕を変える」など提案内容が全然変わってきますよね。
重ねてになりますが、最も重要なのは「お客さんのニーズに答えること」です。
お客さまの相談に乗ることでお客さまから学び、次のお客さまに応えるのが本質でしょう。
ドラッグストアで働いていれば、医薬品以外の知識を身につける環境にもあるし、お客さまから話を聞くチャンスもいっぱいあるでしょう。
登録販売者の皆さまには、経験を積んで、世間の変化に対応できる人材になっていってほしいと思います。
そのためには、お客さまに信頼される専門家になるのがテーマだと思います。
それがお客さまのためであり、自分のためでもあります。
お客さまから聞かれたら、勉強しますよね。
接客時のお客さまの顔色、話し方、目の動きなど…、多くの情報が得られる対面でのコミュニケーションを大事にしてください。
「近くにいる」というのが、いかに大事なことかわかってくるでしょう。
登録販売者は、まさに「ヘルスケアの申し子」だと考えています。
どうしたら病気や介護を予防できるのかという知識が集約されているべき職種だと思うのです。
つまり、私たちの考えを実践するのが登録販売者。
医療保険制度の維持やお客さまの健康など、ご本人たちが思う以上に多くの人の役に立っているわけです。
働き方に不満を感じている方がいらっしゃるのは、ご自身のキャリアの方向性が見えにくいからかなと思います。
「第2薬剤師」のような扱いを受けたくないのなら、そうならない方法を考えましょう。
名指しで指名してくれるお客さまが100人いたら、その人はどの業界・店舗にいってもやっていけるでしょう。
私が、医師なども含めて専門職の方々にお伝えしているのは、お客さまや患者さまから頼られる人になってほしいということです。
それが、本人ないしは組織のためになります。
お客さまから必要とされて忙しいのは、とても名誉なことでしょう。
資格を持っているから専門家なのではなくて、あの人に相談したいと思われて、はじめて専門家になるのです。
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