著名人コラム
2022-12-23
糖尿病の方が飲める市販の解熱鎮痛薬はありますか。【鈴木伸悟先生のお悩み相談室!第12回】
・Before
・After
薬の成分や飲み合わせ、接客、同僚との人間関係など、たくさんの悩みや不安を抱えながらも、お客さまに最適な提案ができるよう奮闘する登録販売者。 そんな登録販売者のお悩みに、SNSや講演会、業界紙などを中心にOTC医薬品の情報発信を行う薬剤師の鈴木伸悟先生が答えます! 第12回は、コロナ禍でニーズが高まっている解熱鎮痛薬についてです。とくに注意が必要な糖尿病の方への対応や販売時の注意点を教えていただきました。
糖尿病など持病がある方は主治医への相談を優先すべき
「糖尿病なのですが、この鎮痛剤(または解熱剤)を服用しても大丈夫でしょうか?」といった相談を受けた経験がある医薬品登録販売者の方もいるでしょう。
以前の高血圧の方への対応方法のコラムでご説明した通り、糖尿病や高血圧などの持病がある方は、大前提として主治医への相談を優先するように促すべきだと私は考えています。
一口に糖尿病といっても、軽度の方から複数の医薬品を服用するような重度の方までさまざまなので、OTC医薬品の使用は慎重に検討するべきだからです。
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添付文書に「糖尿病」への注意書きがない場合はどう考える?
OTCの解熱鎮痛薬には、主な成分としてイブプロフェンやロキソプロフェン、アセチルサリチル酸、アセトアミノフェンなどがあります。
疾患にかかわらず医師や歯科医師の治療を受けている方の場合は添付文書に「相談すること」として注意が促されているものの、糖尿病に関しては「してはいけないこと」「相談すること」として注意が明記されている商品はほとんどありません。
しかし、バファリンAやエキセドリンA錠などに配合されるアセチルサリチル酸(アスピリン)は、糖尿病治療中の方が服用している血糖値を下げる薬と併用すると、血糖降下作用が増強されてしまうおそれがあります。
これは、アセチルサリチル酸にも血糖値を下げる作用などがあるためです。
血糖値が下がり過ぎた状態は「低血糖」と呼ばれ、重症化すると昏睡など意識のない危険な状態になってしまうことがあります。
こうした理由から、糖尿病で治療中の方には、アセチルサリチル酸ではなく、ほかの鎮痛成分を提案する方が無難だと考えています。
また糖尿病の方に処方されることがある血糖降下剤のグリメピリドは、血糖降下作用を増強するおそれがあるため、ロキソプロフェンなどとの併用に注意が必要です。
このようにOTC医薬品の添付文書に「糖尿病」に関する注意書きがなくても、お客さまの服用している薬によっては併用時の注意点について検討しないといけません。
医療用医薬品に関わる接客では薬剤師との連携を
薬局やドラッグストアでの販売時、医療用医薬品が関わってくる相談のケースでは、薬剤師と連携するのが理想だと思います。
薬剤師がいない店舗に勤務されている医薬品登録販売者の方は、お客さまの疾患やその治療薬まで考慮して慎重に対応してください。
対応が難しいと感じた場合には、「こちらのお薬は、糖尿病に関しては注意の記載がないのですが、糖尿病で服用されているお薬との飲み合わせが悪い場合もありますので、まずは主治医にご相談ください」と丁寧に説明すると良いでしょう。
【回答者プロフィール】
回答者:鈴木 伸悟(すずき・しんご)さん
有限会社ウインファーマ セルフメディケーション推進室室長。
薬剤師および登録販売者へ適切なOTC医薬品のすすめ方や売り場作りなどの教育に携わる。
SNSでは、大手ドラッグストアおよび調剤薬局での自身の勤務経験をもとにOTC医薬品の役立つ情報発信を行い、全国各地での講演会やコラムの連載など多方面に活躍している。
著書「薬局OTC販売マニュアル〜臨床知識から商品選びまで分かる〜 日経BP社」

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