登録販売者の働き方
2022-04-07
登録販売者は増えすぎ?業界の最新動向と今後に備えてできること
・Before
・After
登録販売者は2015年の受験資格の緩和以降、受験者および合格者の増加傾向が続いています。資格取得者が増えすぎることによる悪影響を懸念している登録販売者の方も多いのではないでしょうか。 今回は、登録販売者の現状や業界動向、今後の需要・将来性を見つつ、ほかの登録販売者との差別化のためにできることについて解説します。
登録販売者の人数は増えすぎたのか
冒頭でお伝えの通り、登録販売者の資格取得者は増加傾向にあります。
2021年3月時点で合格者は累計30万人を超えることから、一部では登録販売者は飽和状態だという声も聞かれるようになりました。
現状を把握するために、これまでの試験合格者数や合格率、資格取得者が増加している要因について見ていきましょう。
登録販売者試験の合格者数と推移
日本薬業研修センターの調査によると、2021年度の登録販売者試験の受験者数は61,070人、合格者数は30,082名、合格率は49.3%でした。
2020年度以前の受験者数と合格者数の推移は以下の通りです。
年度 | 受験者数(人) | 合格者数(人) | 合格率(%) |
---|---|---|---|
2020年度 | 52,959 | 21,953 | 41.5 |
2019年度 | 65,288 | 28,328 | 43.4 |
2018年度 | 65,500 | 27,022 | 41.3 |
2017年度 | 61,126 | 26,606 | 43.5 |
2016年度 | 53,369 | 23,330 | 43.7 |
2015年度 | 49,864 | 22,901 | 45.9 |
2014年度 | 31,362 | 13,627 | 43.5 |
2013年度 | 28,527 | 13,381 | 46.9 |
2012年度 | 28,050 | 12,261 | 43.7 |
2011年度 | 33,913 | 16,007 | 47.2 |
2020年度の試験では、新型コロナウイルス感染症拡大の影響による受験者減少の影響が見られましたが、過去10年の受験者数・合格者数の推移を見てみると増加傾向が続いていることがわかります。
▼参考資料はコチラ
日本薬業研修センター『2021年度 登録販売者試験情報』
厚生労働省『これまでの登録販売者試験実施状況等について』
試験の合格率と難易度
登録販売者試験の試験は都道府県ごとに行われており、その試験問題も地域ブロックごとに異なります。
合格率には地域差が見られますが、全国平均で見ると40%台で推移を続けています。
合格者の実数は増えていますが、試験が易しくなった、簡単に取得できるようになったわけではありません。
登録販売者が増加した理由の一つは「受験資格の撤廃」
登録販売者試験は、省令改正によって2015年度の試験から受験時の実務経験や学歴が不問となりました。
誰でも受験可能になったことで受験者が増え、2015年以降は合格者数も1万人以上増加しています。
登録販売者は不要に?「2分の1ルール」撤廃による影響とは
登録販売者が飽和していると言われる理由は、資格取得者の増加だけではありません。
これまでOTC医薬品(一般用医薬品)の店舗販売業が満たす必要があった「2分の1ルール」が撤廃されたことによる影響も指摘されています。
「2分の1ルール」とは?
店舗でのOTC医薬品の販売にあたっては、以下のような通称「2分の1ルール」が定められていました。
- 薬剤師または登録販売者が在籍していること
- 営業時間の2分の1以上、資格取得者が在籍して販売できる状態であること
つまり、24時間営業の店舗で医薬品を販売するには、12時間は医薬品販売が可能な状態にしておかなければならなかったのです。
そのため、コンビニエンスストアをはじめとした長時間営業店舗の新規参入は大変困難でした。
そして業界団体の訴えにより、2021年8月から規制緩和の一環としてルールが完全撤廃されたのです。
「2分の1ルール」撤廃による影響
近年、「2分の1ルール」が撤廃され、登録販売者の需要が減少する可能性が指摘されています。
たとえば24時間営業のコンビニエンスストアが医薬品を扱う場合、登録販売者(もしくは薬剤師)を毎日12時間稼働させるため、少なくとも3~5人雇用する必要がありました。
しかし、ルールの撤廃によって、医薬品を販売する時間を短縮してその人数を抑えることも可能になったわけです。
とはいえ、医薬品の販売に資格取得者が必要という事実に変わりはありません。
短時間の店舗運営が可能になったために、これまで参入不可能だった店舗の新規参入が増えて新たな需要が期待できるという考え方もあります。
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OTC医薬品の「2分の1ルール」撤廃!登録販売者の活躍の場は広がる?
登録販売者不要論とは?
近年、「登録販売者不要論」が囁かれるようにもなりました。
これは、その名の通り「医薬品の販売に専門家は不要」とする考え方です。
今では、消費者はネット販売だけでなく、一部の医薬品販売店舗からフードデリバリーサービスを通じて医薬品を購入できるようになっています。
相談応需に対応できる仕組みが整えられているものの、資格取得者が関与せず消費者が自由に購入している例も少なくありません。
「登録販売者不要論」はかつてネット販売の解禁時に話題になっていましたが、今回の「2分の1ルール」撤廃をはじめとした規制緩和などによって再燃してきています。
登録販売者にはOTC医薬品の販売だけでなく、後述する「社会的な役割」も期待されているため、登録販売者不要論が現実になる可能性は低いと考えられるでしょう。
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「登録販売者不要論」とは?議論の背景と広がる活躍の場について
登録販売者の今後の需要と将来性
登録販売者の増加と規制緩和の流れから、その将来性に不安を覚える方もいるのではないでしょうか。
しかし、店舗での販売以外での登録販売者の需要は拡大しており、今後以下のような活躍が期待されています。
セルフメディケーションの推進
国は医療費の削減のため、「自分自身の健康に責任をもち、軽度な身体の不調は自分で手当てする」とするセルフメディケーションを推進しています。
セルフメディケーションでは、消費者がOTC医薬品を利用することを想定しています。
店舗で情報提供を行い、消費者の健康をサポートする登録販売者の重要性はますます高まっていくでしょう。
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セルフメディケーション税制とは?登録販売者への影響と求められる役割
地域包括ケアシステムでの連携
地域包括ケアシステムとは、高齢者が要介護状態になっても地域で最期まで穏やかな生活を送れるように地域で支援を行う体制を指します。
OTC医薬品の販売や情報提供を行う登録販売者には、チームの一員として地域住民の健康を支える役割を果たすことが期待されているのです。
店頭で直接相談に乗ってセルフケアを促進できる登録販売者の存在は、地域包括ケアシステムに欠かせないものと言えるでしょう。
通販やコールセンターでの活躍
登録販売者の需要は、ネット通販業者やコールセンターでも高まっています。
OTC医薬品の販売は通販であっても実店舗の設置が必要であり、実店舗と同様の規則に基づいた対応が求められるためです。
また、医薬品を扱わないヘルスケア関連の通販やコールセンターでも、専門的な知識をもつ登録販売者が求められるようになっています。
このように、登録販売者が活躍できる場はドラッグストア以外にも広がっているわけです。
一方で、ドラッグストアの店舗拡大に伴う登録販売者の需要も増加しています。
登録販売者の需要が今後大きく減少することは考えにくいでしょう。
登録販売者が市場価値を高めるためにできる3つのこと
今後も登録販売者の数は増えていくと考えられます。
一方、資格を有しているだけでは差別化が難しいのも事実です。
そこで、現役の登録販売者が市場価値を高めるために取り組んでおくべきことを紹介します。
1.健康相談や服薬指導のスキルを磨く
医薬品の接客から一歩進んだ健康相談や服薬指導のスキルの研鑽によって、ほかの登録販売者との差別化が可能です。
セルフメディケーションの普及につれて、高く評価されるようになるでしょう。
2.店舗管理者になる
管理者要件を満たした登録販売者は高い需要があります。
とくに資格取得者の数が限られる異業種に転職するには、管理者要件は必須と言えるでしょう。
さらに店舗管理者の経験があれば、マネジメント能力やその実績も評価もされます。
3.関連資格の取得で差別化を目指す
登録販売者以外の資格取得も有効です。
化粧品を扱う店舗であれば「ビューティーアドバイザー」、調剤を扱う店舗であれば「調剤薬局事務資格」の取得で、対応可能な業務の幅が広がります。
また、「サプリメントアドバイザー」や「健康食品管理士」といった健康食品に関する資格を取得し、商品知識を深めるのもおすすめです。
資格の取得はお客さまのニーズに合わせて、医薬品にサプリメントや健康食品の知識も絡めた商品提案が積極的に行えるようになるため、販売力の向上につながるでしょう。
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ビューティーアドバイザーとは?ドラッグストアで役立つ資格を紹介
登録販売者としての市場価値を高めよう
登録販売者の資格取得者は増加し続けており、活躍の場もドラッグストアに限らず広がっています。
規制緩和による影響はあるものの、ドラッグストアの店舗拡大の流れもあり、今後しばらくは需要の高い状態が続くと考えられるでしょう。
普及が進む地域包括ケアシステムにおいては、登録販売者にも社会的な役割を果たすことが期待されています。
一方、自身の市場価値を高めるためにはスキルアップが欠かせません。
登録販売者の需要が仮に飽和しても求められる人材になれるよう、今のうちから差別化しておくのが大切です。

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