著名人コラム
2024-07-12
漢方薬と西洋薬の違い!お客さまに合うのはどちら?【クラシエ薬品が解説!登録販売者向け漢方講座】
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漢方を販売する登録販売者の皆さんのなかには、接客時に知識が足りず「うまく答えられなかった」という経験をおもちの方もいるのではないでしょうか。そうした悩みがちなポイントに、漢方薬メーカーの「クラシエ薬品」の担当者がアドバイスする新連載がスタート!今回は、市販の漢方薬と西洋薬の違いについて紐解きます。
漢方薬と西洋薬の違い
まず前提の知識として、現在日本で用いられている漢方薬は、生薬と呼ばれる自然由来の植物や動物、鉱物などを原料に作られたお薬です。
漢方医学の基となる理論体系が成立したとされるのは2000年以上も昔で、「漢の国(現在の中国)に住む“漢”民族より伝わった“方”術(医術)」であったことから、「漢方」と呼ばれるようになったとされています。
この方術で治療薬として用いられていたのが、漢方薬です。
原料となる生薬には、たとえば、うるち米・生姜(しょうが)・棗(なつめ)・山芋・薄荷(ハッカ)・ハトムギなど、今でも食材として頻繁に利用されるものが多くあります。
これは生薬の起源が食べ物にあり、食べ物の中でも薬効のあるものを生薬として分類したためと言われています。
これらをふまえ、次で漢方薬と西洋薬の違いについて詳しく見ていきましょう。
製法・作用の仕方が異なる
漢方薬の多くは、皆さまに馴染みのある食べ物などからなる生薬を複数配合して作られたものです。
西洋薬は、今でこそ化学技術を駆使して新薬を創っていますが、古くは生薬同様に植物などから創られていました。
漢方薬との製法で異なるのは、薬効のある植物から、効果の認められる成分の抽出・精製を行い、単一の成分を薬(西洋薬)としていたことです。
これにより、特定の部位にのみシャープに働きかけ、局所で効果を発現させます。
一方、漢方薬は治療目的に合わせて、複数の生薬を組み合わせ、体のバランスを整えながら症状を改善する薬です。
体内のバランス調和は、一つの症状の改善にとどまらず、複数の症状改善につながることもあります。
漢方には「味」や「寒熱」の考え方がある
漢方薬ならではの特徴として、漢方薬やそれを構成する生薬には「味」や「寒熱」といった性質があると考えています。
味は漢方治療において薬効が期待されており、食事による健康や治療のサポート(食養生)でも活用できる考え方です。
寒熱(体を温めたり、冷やしたりする作用)は、漢方薬選びにおいて重要な指標であり、寒熱の体質にあった漢方薬を選ぶことで、効果的な治療が行えるようになります。
漢方薬のほうが向いているケースとは?
漢方薬のほうが向いているのは、体質改善や複数の症状を同時に改善したいケースです。
漢方の場合、処方を選ぶ際に、まずはさまざまな角度から病の情報収集を行い、病気の分析を行います。
病気の分析においては、漢方は独自の物差し(気血や五臓六腑、虚実・寒熱など)を駆使して、病気の原因を突き止め、表面上に現れた症状を見極めるのです。
治療においては、体全体の調和を図りながら原因に対して治療を行うことで、体質改善を図れるだけでなく、一つの原因から起こる複数の症状を改善できるのが特徴になります。
西洋医学の場合は、症状を発現させる受容体などに、明確に作用する成分を用いて狙った症状を改善するのが特徴です。
以上から、一つの症状を改善させることに関しては、西洋薬と漢方薬で効き方の違いはあるものの、症状の改善を目的としている点で差はないと言えます。
一方で、漢方薬は原因(体質)を改善して、複数の症状を緩和することが期待できるため、複数の症状でお悩みの方へはお勧めしやすいのではないでしょうか。



どちらを選ぶか迷ったときの判断基準
次では、接客時に西洋薬と漢方薬のどちらをおすすめするか悩んだときの対応例について見ていきましょう。
たとえば、便秘でご相談に来られたお客さまがいたとします。
西洋医学で考える場合、便秘という症状に、刺激性下剤・膨張性下剤・浸潤性下剤・塩類下剤など、どの下剤を用いるのかをお客さまの病状に合わせて選択されると思います。
もしこのお客さまから「便秘のほかにも、太り気味でのぼせがあり、ニキビがよくてできて困っている」と相談されたなら、あなたはどのような対応をしますか?
ニキビやのぼせの症状であれば、西洋薬の便秘薬で同時にアプローチできるものがあります。
しかし、太り気味という悩みについては肥満改善薬や健康食品を、便秘薬とは別でご提案してしまうかもしれません。
漢方の場合は次のように関連付けて考えます。
今回のようなケースだと、漢方薬の防風通聖散をおすすめすることで、便秘・のぼせ・ニキビ・肥満のお悩みにまとめて対処できることがわかるでしょう。
独自の物差しで病を分析し、複数の症状を一度に解決できる可能性をもつのが漢方の特徴の一つだと言えるのです。
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【執筆者プロフィール】
執筆者:矢嶋 浩平(やじま・こうへい)さん
クラシエ薬品株式会社 ヘルスケア事業部 学術部
クラシエ薬品株式会社では、OTC医薬品販売員の皆さまへ、病気の分析や漢方薬の選定など、中医学を基にした接客に活かせる情報の提供を行っています。中医学にご興味のある登録販売者の方向けにeラーニングのご用意もございますので、ぜひクラシエ薬品の営業担当までお声がけください。

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