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2024-11-22
漢方の「体力中等度」とは?体質に合った漢方薬を選ぶための注意点【クラシエ薬品が解説!登録販売者向け漢方講座】
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漢方薬メーカー「クラシエ薬品」の担当者が、市販の漢方に関する登録販売者の疑問・お悩みに回答する連載企画。第4回目のテーマは、漢方の「体力中等度」の意味についてです。漢方における考え方や判断基準、漢方薬を選ぶ際の注意点を詳しく解説。「なんとなくわかるけど、誰かに説明するのは難しい…」そんな方も、この記事を読めばきっと理解が深まります。
漢方の「体力中等度」とは?
まず始めに、体力表記のある「しばり(使用制限)」が、内服するすべての一般用漢方製剤に記載される基準として制定されたのは、2008年のことです。(薬食審査発第0930001号)
体力とは、日本漢方における「虚実」の概念を置き換えて記述したもので、主に5段階で分類されています。(虚証から実証へと順に、「体力虚弱で」「やや虚弱で」「体力中等度で」「比較的体力がある」「体力充実して」)
したがって、本来の虚実の捉え方を重ねて考えると、下記のことが言えます。
このことから、「体力中等度で」というのは、ちょうどこの虚実の概念の真ん中に位置する体質の方を指しているわけです。
「体力中等度以上」「体力中等度以下」の判断基準は?
「体力中等度以上」「体力中等度以下」は、日本漢方における実証寄り・虚証寄りの体質を参考に判断されるのが良いと考えます。
たとえば、次のような基準を参考にされると良いでしょう。
- 体型ががっしりしている方は実証、弱々しい方は虚証
- 活発で活動的な方は実証、内に閉じこもりがちで消極的な方は虚証
- 胃腸が丈夫な方は実証、虚弱な方は虚証
- 栄養状態の良い方は実証、悪い方は虚証
- 発声が力強い方は実証、弱々しい方は虚証
「しばり」は、漢方の専門用語を一般の方々も理解できるようにと、言葉をわかりやすく置き換えたものです。
したがって、「しばり」の中にある体力の記載も、日本漢方における虚実を簡便に判断できることを期待して作成されたものになります。
皆さまがなんとなく感じられている体力の見解とも概ね一致しているのではないでしょうか。

体力で漢方薬を選ぶときの注意点
注意すべきは、真逆のタイプの方に漢方薬を勧めないことです。
たとえば胃腸が虚弱で明らかに弱々しい虚証の方に、「体力充実して」と記載のある処方(麻黄湯や防風通聖散など)を用いてしまうと、副作用を起こすリスクが高まるためお勧めできません。
しばり表現を意識しながら、それぞれの体質にあった漢方薬をお勧めください。
なお、中医学では虚実※の概念が異なるため、(日本漢方での虚実より生まれた)体力という概念がありません。
しかし、中医学を学んでいる方にとっても、日本漢方の虚実より生まれた体力の考え方は、販売時の参考にできると考えています。
※中医学における虚実とは、人体の構成要素の不足(虚)と病を起こす原因(実)を指します。
▼参考資料はコチラ
株式会社じほう『新 一般用漢方処方の手引き』(2013年9月発行)
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【執筆者プロフィール】
執筆者:矢嶋 浩平(やじま・こうへい)さん
クラシエ薬品株式会社 ヘルスケア事業部 学術部
クラシエ薬品株式会社では、OTC医薬品販売員の皆さまへ、病気の分析や漢方薬の選定など、中医学を基にした接客に活かせる情報の提供を行っています。中医学にご興味のある登録販売者の方向けにeラーニングのご用意もございますので、ぜひクラシエ薬品の営業担当までお声がけください。

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