現場で役立つ知識
2021-10-08
「濫用等のおそれのある医薬品」の適正販売のため、登録販売者にできることは?
・Before
・After
市販薬を扱う際に気をつけなければならない問題の一つが「濫用等のおそれのある医薬品」の適正販売です。本来は販売すべきでないお客さまに言われるがまま渡していると、お客さまの健康を損なう可能性があります。今回は「濫用等のおそれのある医薬品」が具体的にどういうものなのか、これらの取り扱いが社会問題になっている背景などを詳しく見ていきましょう。適正な販売を行うためのルールや対応方法についても紹介しているので参考にしてみてください。
濫用等のおそれのある医薬品とは?
「濫用等のおそれのある医薬品」とは、市販薬のうち、適正な使用量を超えて濫用される可能性があるため、原則として薬効分類ごとに1人1包装単位での販売が定められているものを言います。
厚生労働省「「 濫用等のおそれのある医薬品」 の適正販売に向けた販売者向けのガイ ドラインと関係団体等に向けた提言」 について( 情報提供)」によると、2020年3月末時点で該当するのは、以下の成分を含む医薬品です。
・コデイン(鎮咳去痰薬に限る)
・ジヒドロコデイン(鎮咳去痰薬に限る)
・ブロムワレリル尿素 ・プソイドエフェドリン
・メチルエフェドリン(鎮咳去痰薬のうち、内用液剤に限る)
「濫用等のおそれのある医薬品」は、誤った使い方により依存や中毒を招くことが問題としてあげられます。
厚生労働省「濫用等のおそれのある市販薬の適正使用について」で公表されたデータでは、薬物依存の原因として最も割合が大きいのは覚せい剤ですが、市販薬も2016年の5.2%から2018年には5.9%と増加傾向にあることがわかっています。
「濫用等のおそれのある医薬品」にかかわる問題点は?
「濫用等のおそれのある医薬品」には原則として1人1包装の販売というルールが定められていますが、とくにインターネット上での店舗では、販売ルールが守られていないケースが散見されます。
厚生労働省による2019年度の「医薬品販売制度実態把握調査」では、「濫用等のおそれのある医薬品」を適切に販売しているネットショップは45.9%であり、5年連続で50%を下回りました。
さらにコロナ禍で自由な生活を制限されるストレスや不安から、医薬品の濫用に走ってしまうケースもあるようです。
誰でも簡単に購入できるからこそ、とくにネットショップは医薬品濫用の温床になりやすいと言えます。
はじめは疾病の治療のために服用していても、だんだんと気分の落ち込みや不安感を紛らわすために目的外使用をしてしまう方は少なくありません。
目的外使用を続けていると、服用をやめようとしても薬の効果が切れた際の離脱症状(倦怠感や意欲の減退など)にさいなまれ、「やめたくてもやめられない」状態に陥ってしまいます。
そうして市販薬を購入するために多くの金銭的、時間的コストをかけてしまったり、登校や仕事をこれまで通り続けられなくなったりして、日常生活に支障をきたすようになるのです。
さらに、医薬品を使って入院治療が必要になるほどの副作用が出た場合は、医療費や年金などの給付が受け取れる「副作用被害救済制度」がありますが、医薬品の濫用で目的外の使用を行っている場合は対象外となります。
このように、医薬品の濫用は生活に支障が出るほどの影響がありながら、それを防ぐための対応策が販売店舗側でも不十分であることは大きな課題となっています。

登録販売者がおさえておきたい店舗での対応
それでは、実際に「濫用等のおそれがある医薬品」を購入しようとしている方が来店された場合、登録販売者はどのような対応をすべきなのか見ていきましょう。
【対応①】声掛けを行う
「濫用等のおそれがある医薬品」は、原則1人1包装までの販売と定められています。
それを超えて購入しようとしているお客さまには、「こちらの医薬品を購入されるお客さま全員に確認させていただいているのですが……」とワンクッションおいたうえで、以下の声掛けを行いましょう。
(1)「使う方はご本人さまですか?」
とくに中学生や高校生などの若年層が購入しようとしている場合は、使用者を確認したうえで、購入者の氏名と年齢も確認が必要です。
(2)「このお薬は初めて使いますか?」
初めてではなくいつも使っていると答えられた方は要注意です。
すでに濫用している可能性や、疾病の治療目的での使用としても市販薬では対応できない可能性があります。
常用している様子が見られたら、「このお薬は続けて使うものではありません。お客さまの症状は市販薬で対応できない可能性があるので、病院を受診してみてください」と受診勧奨を行いましょう。
その際、受診すべき診療科なども伝えられるとより親切です。
(3)「ほかの店舗で似たようなお薬を購入されたことはありますか?」
複数の店舗を回って「濫用等のおそれのある医薬品」を買い集めている方もいます。
まったく同じ製品ではなかったとしても、似たようなお薬を買われている場合は「一緒には飲めないお薬です」と伝えて販売を断りましょう。
また、その方がほかの店舗で同じ薬を購入しないよう適切な指導も必要です。
(4)「原則お1人さま1つまでの販売ですが複数購入される理由はなんですか?」
「濫用等のおそれのある医薬品」は基本的に1人1包装までの販売と定められています。
お客さまが複数個をレジにもって来られた場合は、なぜ1つではいけないのか理由を確認しましょう。
そのうえで、安全のため症状が出た際にその都度購入するように促します。
(5)「身分証はお持ちですか?」
「濫用等のおそれのある医薬品」はとくに中学生や高校生など若年層での濫用が多いという問題点があります。
身分証の確認は、そのことが目的というわけではなく、「身分証を見せないといけないならやめておこう」と濫用目的での購入を思いとどまらせる抑止効果が主な目的です。
【対応②】POPや商品陳列での対応
1人1包装までの販売制限があることを理解してもらいやすいように「お1人様1つまで」と記載したPOPを掲げるのも有効でしょう。
また、濫用が起きやすい医薬品は棚に商品ではなく空箱やカードを置き、カードと引き換えに商品をお渡しするなどの工夫も必要です。
医薬品の適正販売を意識し、お客さまの健康を守ろう
「濫用等のおそれのある医薬品」の不適切な使用は、中学生や高校生など若年層から30代や40代まで幅広い年代で起きていると言われています。
とくに若年層で依存者が多く見られるため、販売には細心の注意が必要です。
ドラッグストアは気軽に医薬品が購入できとても便利な一方で、気軽なぶん医薬品濫用の温床になりやすい場でもあります。
地域のお客さまの健康を守るのは登録販売者の重要な役割です。
濫用を未然に防ぐため、店舗や個人でしっかりと声掛けなどの対策を行いましょう。

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