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2025-01-17
店舗がとるべき防犯対策! ドラッグストアで起こり得る犯罪の種類や対策を解説
・Before
・After
多くの人が出入りする店舗では、ときに悪意のある犯罪が起こり得ます。野放しにしておくと店舗の損害にもつながるため、しっかりと対策を行わなければなりません。とはいえ、具体的にどのような対策を行えばよいのか迷う方も多いでしょう。犯罪を防ぐためには、一つではなく複数の対策を行うことが大切です。この記事では、店舗で起こる犯罪の例とドラッグストアでできる12個の防犯対策を紹介します。
店舗で起こる犯罪の現状と防犯対策の必要性
店舗で起こる犯罪にはいくつかの種類があります。
次では、その具体例と現状について説明します。
侵入窃盗
侵入窃盗とは、店舗や住宅などに無断で侵入して金銭や品物を盗む犯罪です。
侵入窃盗の件数は2002年まで増加傾向にありましたが、2003年から2022年までは減少し続けていました。
しかし、2023年には認知件数が4万4,228件(前年比+20.9%)と再び増加しています。
発生場所はドラッグストアなどを含む「商店」が6.3%(約2,790件)で、「住宅」と比較すると少ないですが、店舗には現金や多数の商品などがあるため被害額が大きくなる傾向があります。
2024年には、不審な4人組がドラッグストアのガラスを叩き割って店舗へ侵入し、化粧品など約170万円が盗まれる事件が起こっているため注意しましょう。
侵入強盗
侵入強盗とは、店舗や住宅などに侵入して従業員や住人を凶器で脅し、金品などを強奪する犯罪です。
2003年をピークとして発生件数は減少傾向にありましたが、2023年には414件(前年比+42.8%)と増加しました。
侵入強盗が発生している場所の44.4%(約180件)は「商店」です。
2023年には、ドラッグストアのレジにいる店員をショルダーバッグ内に隠した刃物のようなもので脅し、現金を奪った事件が発生しています。
万引き
万引きは、店舗内の商品を盗む犯罪です。
警視庁によると、2023年1~12月の万引きの認知件数は93,168件(前年比+11.4%)に上っています。
2024年も1月~10月までの期間で81,498件となっており、増加傾向にあることがわかります。
店員が見ていない場所でかばんやエコバッグなどの袋に商品を入れて持ち出すなど単独犯によるものが一般的ですが、窃盗グループによる複数人での犯行(実行犯を複数人で囲み、店員から見えないようにして盗む/グループの一人がおとりになり、店員の気をそらせて盗むなど)も起こっています。
内引き
内引きは、店舗の従業員が商品を盗む犯罪です。
具体的には、店舗の商品を店員が無断で持ち出したり、レジや金庫に入っている金銭を店員が盗んで持ち帰ったりする行為を指します。
暴行
暴行とは、相手に対して「殴る」「蹴る」などの行為したときに成立する犯罪です。
服を引っ張る、凶器を振り回すなどの行動も暴行にあたる可能性があります。
最近では、ドラッグストアで男性がほかのお客さまを殴り、鼻や目のあたりを骨折させる事件などが起きています。
その他
放火や車上荒らし、盗撮などもよくある犯罪です。
特に混雑している店舗内では、盗撮されることがあるので注意しなければなりません。
たとえば、カメラを起動したスマートフォンをバッグの外ポケットに入れ、店内を歩きながら女性を盗撮する事件なども起きています。
▼参考サイトはコチラ
警察庁『侵入犯罪の脅威』
警察庁『犯罪統計』
ドラッグストアでできる防犯対策
ドラッグストアなどの店舗は人の出入りが多いため、犯罪が起こりやすい場所と言えます。
従業員やお客さまを守るためにも、日頃から防犯対策をしっかり行うことが大切です。
次では、ドラッグストアで取り組むべき12の防犯対策について説明します。
防犯カメラや防犯ガラスを設置する
防犯対策として、防犯カメラや防犯ガラスの設置は欠かせません。
とくに防犯カメラは、犯罪が起きた際に証拠としても使えます。
人員に余裕がある店舗なら、防犯カメラの映像をモニターでチェックして怪しい動きをしている人をいち早く見つけることもできます。
従業員が不在のときの防犯対策としては、防犯ガラスで物理的に店舗を守るのが効果的です。
さらに扉の鍵を2重ロックにしておけば、強固な対策ができます。
防犯ゲートを設置する
万引きされやすい商品に防犯シールを貼り、シールをはがさない状態で防犯ゲートを通ると音が鳴る仕組みを活用した防犯対策もおすすめです。
小さな化粧品などは簡単に万引きされてしまいます。
防犯ゲートを設置しておけば音で知らせてくれるので、その場ですぐに万引きしていないか確認を行うことが可能です。
積極的なあいさつ、声かけを行う
万引き対策に有効なのが、お客さまへの積極的なあいさつや声かけです。
あいさつや声かけを行うと、相手は「自分の存在が店員に認識されている」と感じます。
そのため、万引きに対して心理的なストップをかけられるのです。
ただし、しつこい声かけはかえって不審がられますので、「いらっしゃいませ」などの簡単なあいさつや声かけにとどめるのがおすすめです。
明らかに不審な動きをしている方には「何かお困りですか?」と声をかけるのもよいでしょう。
マイバックのマナーに関する呼びかけ
レジ袋が有料になり、マイバッグを使う方が増えた影響で万引き被害も増加傾向にあります。
購入前の商品をマイバッグに入れ、精算せずそのまま店を出てしまう人がいるのです。
このようなことを防ぐために、マイバッグの使用ルールを呼びかけるようにしましょう。
店内放送で定期的にルールの呼びかけを行う、サッカー台に啓発ポスターを貼るなどの対策が有効です。
防犯対策のポスターやPOPを設置する
売り場に防犯対策のポスターやPOPを設置するのも効果があります。
「万引きを発見次第、警察に連絡します」「万引きは10年以下の懲役または50万円以下の罰金が発生します」など、具体的な例を示したものを設置するのが有効です。
インバウンド需要が高い店舗では、英語や中国語などに対応したポスターやPOPも用意しておくとよいでしょう。
従業員を増やす・店内の巡回を行う
店内全体に人目が行き届くよう、従業員の数を増やす方法もあります。
予算の都合上難しいこともあるかもしれませんが、死角をなくすことで犯罪を未然に防げます。
売り場を整える作業をするのと同時に、店内の巡回を定期的に行うのもよいでしょう。
とにかく従業員が誰もいない空間を作らないことが重要です。
防犯カラーボール・防犯シールを活用する
店内の入口に、防犯シールを貼り、犯罪を防ぎましょう。
「警備員巡回中」「私服警察官巡回中」などのシールを貼っておくことで、相手を警戒させ犯罪の手を止められる可能性があります。
また、レジに防犯用のカラーボールを目立つように置いておくのも効果的です。
カラーボールは、蛍光塗料が付着する特殊なボールです。
犯罪の防止にも使えますし、逃げようとする犯人に投げて目立たせる効果もあります。
戸締りを徹底する
店舗に不法侵入する人を防ぐためにも、戸締まりを徹底して行いましょう。
店舗を閉める際は、必ず施錠をしてください。
施錠後は、誰が鍵を保管しておくかもしっかりと決めておくようにします。
施錠し忘れを防ぐためにも、誰が施錠を行うかを明確にしておくことも大切です。
売上金の管理を徹底する
レジ締めを行ったら、必ずその日の売上金を金庫に移しましょう。
可能であれば、こまめに移しておくのがおすすめです。
金庫は簡易的なものではなく、据え置き型のものを使いましょう。
金庫そのものに重量があるため、持ち出されるリスクが低くなります。
内引き対策にも取り組む
内引きする従業員がいないとも限りません。
倉庫にある在庫商品を持ち帰ったり、金庫の売上金や両替金を持ち出したりなどの犯罪が起こる可能性があります。
売り場だけでなく倉庫や金庫付近にも防犯カメラをつけ、内部の人間が犯罪をしないように対策をしましょう。
防犯マニュアルを用意する
従業員に向けて防犯マニュアルを作成するのも犯罪を防ぐよい対策方法です。
店舗で起こる可能性がある犯罪を共有し、対策方法をまとめておくことで防犯に対する意識を高められます。
また、内引きの予防にもつながるでしょう。
防犯訓練を実施する
防犯マニュアルを共有するだけでなく、店舗に備えている防犯グッズの使い方を従業員にレクチャーして共有することも重要です。
訓練を行っておけば、いざ犯罪者と遭遇したときも落ち着いて対処できるようになります。
▼店舗で使える防犯グッズの例
- カラーボール
- カラースプレー
- さすまた
- 催涙スプレー
そのほか、ドラッグストアで起こる万引きの具体的な対策については、こちらの記事でも詳しく解説しています。
【ドラッグストアの万引き対策】登録販売者必見!被害を防ぐ7つの取り組み
▼参考サイトはコチラ
警視庁『店舗を狙った侵入窃盗に注意』
ドラッグストアの防犯で知っておきたいこと
ドラッグストア店舗での窃盗などの犯罪には特徴があります。
他人事だと思わずしっかりと理解して、いつ犯罪が起きてもおかしくないという心構えをもって日々の業務にあたりましょう。
高額な化粧品やサプリメントが狙われやすい
ドラッグストアで狙われやすいのは、化粧品やサプリメントです。
比較的高額でコンパクトなため、転売などを目的として一度に大量の商品を窃盗されてしまうことが少なくありません。
売れ筋の化粧品を大量に窃盗・万引きし、海外に持ち出すケースもあります。
海外でも需要が高い化粧品やサプリメントはターゲットにされやすいので十分に注意をしましょう。
空き箱を陳列して防犯対策を行っている商品の場合でも、従業員がいない隙を狙って現品をレジ内から持ち出す可能性があります。
防犯対策をしているからといって、油断は禁物です。
同じレイアウトの店舗が狙われた事例がある
レイアウトが同じチェーン店がターゲットにされたケースもあります。
とあるドラッグストアチェーンでは、5店舗で連続して窃盗事件が起こりました。
盗まれた総額は約500万円にも及びます。
店舗のレイアウトが同じだと、どこに行っても同じように店内に入れるうえ、同じような配置で商品が置いてあるので盗みやすいわけです。
医薬品が盗まれた場合のリスクもある
医薬品が盗まれて悪用されることもあるため、注意が必要です。
とくに「濫用等の恐れがある医薬品」はターゲットにされやすいので、十分に気をつけてください。
コデインやジヒドロコデイン、ブロムワレリル尿素、メチルエフェドリンなどが配合された医薬品は、濫用を防ぐために販売できる個数を制限している店舗がほとんどです。
一度に複数の医薬品を購入できないようになっているため、中には窃盗や万引きをして濫用する人もいるのです。
また、濫用等の恐れがある医薬品は、高額転売される可能性があります。
医薬品の誤った使用を防ぐためにも、これらの薬は厳重に管理しましょう。
▼関連記事はコチラ
「濫用等のおそれのある医薬品」の適正販売のため、登録販売者にできることは?接客のポイントを解説

防犯対策は基本が大事!従業員全員で犯罪を防ごう
登録販売者が働くドラッグストアでも、犯罪は日々起こっています。
特に多いのは万引きですが、侵入強盗なども起こっているため起こり得る犯罪への事前の対策が必要です。
防犯カメラや防犯ガラスを設置し、お客さまには積極的にあいさつや声かけを行いましょう。
防犯対策のポスターやPOPを設置するのも有効です。
また、内引きされる可能性も考えられるため、倉庫や金庫など従業員しか入れない場所もしっかりと防犯対策を行ってください。
従業員全員が意識して防犯対策を行うことで、犯罪を大きく減らせるでしょう。
【執筆者】
チアジョブ登販編集部
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