著名人コラム
2023-03-24
成功事例に学ぶ"接客のポイント"をOTC薬剤師・鈴木伸悟先生がくわしく解説<登録販売者ありがとう!接客事例>
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多くの登録販売者の皆さんは、お客さまから薬の成分や飲み合わせを聞かれてうまく答えられなかったり、あとから「ああすれば良かった…」と反省したり、日々トライ&エラーを繰り返されていることと思います。今回の記事では、そんな登録販売者の皆さんに向けて、テレビや専門誌、SNSなどでも注目のOTC薬剤師・鈴木伸悟先生に、明日からの業務にすぐ活かせる登録販売者の接客成功事例と接客時のポイントや考え方について解説していただきました。ドラッグストアでの接客で一度でも悔しい思いをしたことがある方は、ぜひこの記事を読んで対応力の向上につなげてください。
登録販売者の接客成功事例を知ることはなぜ必要?
登録販売者の皆さまは、他企業や他店舗で活躍する登録販売者の姿を見ることはあっても、各々の取り組みついて知る機会はあまりないのはないでしょうか。
しかし、他の登録販売者の経験や実績から学べる点は多くあります。
実際に薬剤師の世界では、画期的な取り組みを発表したり、ヒヤリハット事例を共有したりするなど、さまざまな事例を参考にしながら対応力の向上に励んでいるのです。
登録販売者の場合も、OTC医薬品などの接客で感謝された事例を共有することで、それを見た人はすぐに自身の業務に活かせます。
そうして成功体験を増やし、また事例を共有し合い、モチベーションアップの良い循環を生み出しましょう。
登録販売者の接客成功事例
では早速、登録販売者の成功事例を2つご紹介していきます。
事例1は「解熱鎮痛薬と下痢止め」、事例2では「虫よけ」をお求めのお客さまへの対応です。
事例1:娘さんの「受験対策の常備薬」を選ぶ「50代女性」への対応
ドラッグストアで働く、登録販売者のSさんの事例です。
・来店されたのはどんなお客さま?
受験を控えた娘さんのために常備薬を買いに来た母親
・販売した商品は?
リングルアイビーα200(イブプロフェンの単剤)
ストッパ下痢止めEX(ロートエキス3倍散など配合)
Sさんが働くドラッグストアに、平日の夕方頃、50代の女性のお客さまが来店されました。
話を聞くと、高校生の娘さんが来月に受験を控えているとのことで、もしもの場合に備えるための常備薬(解熱鎮痛薬と下痢止め)を買いに来られたそうです。
「CMで見た商品を買おうと思っています。どれも同じようなものですよね?」と質問されたので、Sさんはまずは「持病」「アレルギー」などの基本事項を確認。
そして大事な試験中に眠気で娘さんのパフォーマンスが低下しないよう、眠気成分が配合されていない解熱鎮痛薬と止瀉薬をいくつか提案しました。
そのお客さまは痛み止めや止瀉薬に眠気が出る商品があることを知らなかったようで、「教えてくれて助かりました」と提案した商品を購入されました。
【鈴木先生が徹底解説!接客のポイント】
解熱鎮痛薬によく配合されているアリルイソプロピルアセチル尿素などは、鎮静成分のため、眠気が出る恐れがあります。
また止瀉薬に配合されるロペラミド塩酸塩も、眠気やめまいを起こすことがあります。
いくら薬が効いたとしても、肝心な受験中に眠気でパフォーマンスが落ちてしまったら母親のニーズには応えられたといえないでしょう。
しっかりとお客さまの背景を考慮したうえで、こうした成分が配合されていない商品を説明して販売できたことは、お客さまのニーズに応えたすばらしい対応だったと思います。
症状に合った商品を選ぶことはもちろん、服用後に車を運転する可能性があるかなど、お客さまの状況に配慮した提案を意識しましょう。
事例2:「虫よけ」を探してお子さまと来店された「40代男性」への対応
次は、同じくドラッグストアで働く登録販売者のOさんの事例です。
・来店されたのはどんなお客さま?
虫よけを買いに来た父親と3〜5歳くらいのお子さま
・販売した商品は?
天使のスキンベープミストプレミアム(イカリジン配合)
Oさんは、3〜5歳くらいのお子さまを連れた父親らしき男性が虫よけを持ってレジに来られたので、対応しました。
商品を確認すると、その虫よけは12歳以上の大人を対象としたもの。
念のため「(お連れの方のような)小さいお子さまも使用されますか?」と父親に確認したところ、お子さまも含めたご家族全員で蚊よけとして使う予定とのことでした。
Oさんは、「小さなお子さまには刺激になることがあり使えない」ということをお客さまにお伝えし、代わりに乳幼児から使用できる商品をご提案。
父親は、「虫よけはどれも同じようなものだと思っていたので、教えてもらえなければ購入して子どもにも使用していた」「親切にありがとうございます」と大変感謝され、提案した代替品を購入のうえ退店されました。
【鈴木先生が徹底解説!接客のポイント】
虫よけの成分には、主にディートとイカリジンがあります。
ディートを配合した商品は、濃度にもよりますが、使用できる年齢や回数に制限があります。
商品を販売する際は、添付文書などでしっかりと注意事項を確認すると良いでしょう。
一方で、イカリジンは肌への刺激が少なく、年齢の制限がないため、小さなお子さまでも提案しやすいのが特徴です。
今回は、「商品の使用上の注意」に記載されている「してはいけないこと(禁忌)」の対象者への使用を防いだ好事例と言えるでしょう。
虫よけの場合には、お子さまの体への悪影響などの不安を抱えるお客さまに加え、「ただの虫よけだから安全」と気にせず使用してしまうお客さまへも適切なフォローをすることが重要なわけです。
接客スキルの向上で登録販売者の認知度アップを!
今回は、ニーズに応えた商品の提案や使用してはいけない人への販売を防いだことでお客さまから感謝された2つの事例を紹介しました。
登録販売者の接客には、臨床知識や商品知識などが豊富にあることが重要です。
お客さまから感謝される対応をするために、さまざまな成功事例を知り、実践することで自分のスキルとして身につけていきましょう。
また、質の高い接客をすることは、多くのお客さまに登録販売者の存在を知ってもらう機会にもなると考えています。
本記事をきっかけに、セルフメディケーションの意識を高め、社会に貢献できる登録販売者を目指していきましょう!
【執筆者プロフィール】
執筆者:鈴木 伸悟(すずき・しんご)さん
有限会社ウインファーマ セルフメディケーション推進室室長。
薬剤師および登録販売者へ適切なOTC医薬品のすすめ方や売り場作りなどの教育に携わる。
SNSでは、大手ドラッグストアおよび調剤薬局での自身の勤務経験をもとにOTC医薬品の役立つ情報発信を行い、全国各地での講演会やコラムの連載など多方面に活躍している。
著書「薬局OTC販売マニュアル〜臨床知識から商品選びまで分かる〜 日経BP社」

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