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2024-01-26
麦門冬湯の効果・飲み合わせ禁忌・副作用は?ご案内の注意点を解説<登録販売者向け>
・Before
・After
麦門冬湯は即効性がある漢方薬で、空咳を改善する効果があります。飲み合わせに禁忌はありませんが、まれに重篤な副作用が起こることがあるので、販売時には注意が必要です。この記事では、麦門冬湯の効き目や副作用、市販品と医療用との違い、妊娠中や授乳中の服用可否などについて具体的に解説します。お客さまへの対応例も紹介するので、ぜひ参考にしてください。
【基礎知識】麦門冬湯とは?期待できる効果
麦門冬湯は主薬であるバクモンドウをはじめ、カンゾウ、ハンゲなど6種類の生薬で構成される漢方薬です。
コンコンとした咳症状に対して効果を発揮します。
体力が中等度以下の人に使われます。
お米のような独特なにおいの比較的飲みやすい漢方薬です。
【麦門冬湯の構成生薬一覧】
麦門冬湯に期待できる効能・効果
麦門冬湯は、喉に潤いを与えるイメージの漢方薬で、外部の刺激から喉を守るはたらきがあります。
乾燥による空咳や、絡みついて取れない痰の症状の改善に効果が期待できます。
風邪が治った後に、咳だけが長引いてしまう場合にも有効です。
効果は比較的短時間で発現するので、症状が合っていればすぐに効果を感じられるでしょう。
他にも、咳止め効果のある漢方薬として「麻杏甘石湯」や「五虎湯」などがあります。
麦門冬湯との違いは、気管支拡張作用がある麻黄が入っていることです。
気管支喘息や気管支炎への効果が期待できるため、症状にあわせて麦門冬湯と使い分けましょう。

【麦門冬湯はこんな方におすすめ!】
- 痰が切れにくい咳が出る人
- 乾いた咳(から咳)が出る人
- 喉が乾燥している人
- 風邪を引いた後に咳が長引く人
- 気管支炎や気管支ぜんそくがある人
- 声がしわがれている人
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麦門冬湯に飲み合わせの禁忌はある?
麦門冬湯に飲み合わせで禁忌に指定されている医薬品や食品はありません。
ただし、他の漢方薬を服用している人は、生薬の重複に注意しなければなりません。
たとえば、カンゾウは多く服用すると、むくみや高血圧症状が出る偽アルドステロン症のリスクがあります。
漢方薬は正しい飲み方で使用する必要があり、服用する側も注意すべき点があることを理解していなければなりません。
飲み方や想定されうる副作用については、事前にしっかり把握しておき、購入希望のお客さまにご案内することが大切です。
麦門冬湯の飲み方
麦門冬湯は、医療用医薬品だけでなくさまざまなメーカーから市販されています。
商品によって、生薬成分の配合量や配合率が異なるだけでなく、顆粒や錠剤などの形状や服用可能な年齢、1日の服用量・回数も異なります。
お客さまの好みや生活リズムをヒアリングして、適切な商品をピックアップし、年齢に合った飲み方を説明しましょう。

麦門冬湯の注意すべき副作用
麦門冬湯の主な副作用は、食欲不振・胃の不快感などです。
ごくまれに、間質性肺炎(空咳、発熱)、偽アルドステロン症(高血圧、体のだるさ)、ミオパチー(倦怠感、筋力の低下)、肝機能障害(からだの痒み、皮膚が黄色くなる)がみられるケースもあります。
お客さまから副作用とみられる症状の相談を受けた際は、すぐに麦門冬湯の使用を止めて医療機関を受診するように案内をしてください。
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麦門冬湯の服用の注意点
麦門冬湯を服用するときの注意点を解説します。
販売時の参考にしてください。
麦門冬湯の服用で注意すること
症状が改善されない場合は、服用中止を促しましょう。
麦門冬湯は服用後、比較的短時間で効果が表れます。
約1カ月を目安に服用しても症状が改善しない場合は、麦門冬湯が体質に合っていない、または他の病気が隠れている可能性があります。
このように判断できるときは、服用を中止して医療機関を受診するように促してください。
麦門冬湯に限らず、お客さまに市販薬を販売するときは、使用期間の目安についても適切にご案内することが大切です。
麦門冬湯の服用に注意が必要な人
- 医師による疾患の治療を受けている人
- 妊娠・妊娠の可能性がある人・授乳中の人
- 水のような痰が多い人
- 高齢の人
- むくみがみられる人
- 高血圧・腎臓病・心臓病を抱えている人
市販薬を販売するときは、治療中の疾患があるかを確認しましょう。
とくに、心臓病、腎臓病、高血圧症などに罹患している人は、服用にあたり注意が必要です。
副作用症状の内容を的確に伝えて、麦門冬湯を服用していることを主治医に伝えるように促してください。
また、妊娠中の女性が服用を希望された場合、主治医に服用の可否を確認してもらうのがベストです。

<対応例>麦門冬湯についてお客さまから質問されたときは
咳症状に悩むお客さまが来店したときの適切な対応方法を紹介します。
接客のポイントとあわせて、ぜひ参考にしてください。
◆人物データ
・年齢:70代男性
・職業:無職
・既往症:高血圧
・服用中の薬:アムロジピン
・アレルギー:なし
・悩み:風邪による咳が長引いている
お客さま:
先週から体調が優れなくて、咳症状が続いて困っています。夜も起きてしまうことが多くて、何かよい薬はありますか?
登録販売者:
長く続く咳症状は辛いですよね。
咳は、ゼロゼロしていますか?それともコンコン咳ですか?
お客さま:
コンコンしているかなあ。
登録販売者:
喉の乾燥がさらに症状を悪化させてしまっているかもしれませんね。では、喉を潤わせて咳を改善する漢方薬はいかがでしょうか?効果はすぐに出る薬ですが、目安として1カ月経っても効果が感じられなければ服用を中止してください。もし、何か治療中のご病気がありましたらお教えください。
お客さま:
高血圧でアムロジピンという薬を飲んでいるよ。
登録販売者:
ありがとうございます。麦門冬湯は稀にむくみや高血圧の副作用を起こす可能性があるので、血圧のチェックはかかさず行ってくださいね。また、息苦しさ、だるさなどの症状が出ることもあるので、異常を感じたら服用は中止して医師の診察を受けてください。
接客のポイント
- 咳の性質をヒアリングする
- 服用期間を説明する
- 治療中の疾患の確認をする
麦門冬湯は、コンコンとした空咳に効果を発揮します。
そのため、咳の性質を確認して、麦門冬湯が合う症状かを判断することが大切です。
飲み合わせで禁忌のものはありませんが、他にも漢方薬を内服している場合は、生薬の重複に要注意です。
とくに、カンゾウは1日の服用量が7g以上になると偽アルドステロン症のリスクが高まります。
また、目安となる服用期間と、治療中の疾患を確認して重大な副作用の自覚症状を説明することも重要です。
麦門冬湯に関するよくあるQ&A
麦門冬湯でよくある質問をまとめました。
お客さまに質問された際に回答できるよう、登録販売者の方は麦門冬湯の知識を深めておきましょう。
Q. 麦門冬湯に即効性は期待できる?
風邪の後に2週間以上長引く咳症状がある人に対して麦門冬湯を投与した研究においては、2日後に強い鎮咳効果が表れた、という結果が出ています。
一方で、臨床上では内服直後咳が静まったという声もあります。
麦門冬湯が体質に合致している場合は比較的短時間で効果を実感できるでしょう。
Q. 市販の麦門冬湯と医療用の麦門冬湯は何が違う?
構成生薬の種類は同じですが、医療用医薬の麦門冬湯は生薬がより多く配合されているため、強い効果を発揮します。
用法に関しては市販薬の方が年齢ごとに細かく指定されていることも違いの1つです。
また、市販薬でもメーカーごとに配合量や用法・用量が異なることがあるため、正しく把握しお客さまに違いをお伝えしましょう。
Q. 麦門冬湯は妊娠・授乳中の方も使える?
市販薬の麦門冬湯は、主治医と相談する必要があります。
一方で、医療用の麦門冬湯では、妊娠中や授乳中の方は治療の有益性が危険性を上回るときのみ服用可能となっているため、慎重な対応が求められています。
妊娠の可能性のある女性への対応はとくに注意が必要です。
どんな影響を与えてしまうかわからないため必ずリスクも踏まえて案内しましょう。
Q. 麦門冬湯を通販サイトで購入してもいい?
市販の麦門冬湯は、通販サイトでも購入可能です。
薬の説明はサイトに記載されているので、購入した場合は一通り目を通しましょう。
副作用や、服用の注意点などについて専門家のアドバイスを希望する場合は、薬剤師や登録販売者がいるドラッグストアでの購入がおすすめです。
Q. 麦門冬湯が効かない場合は?
麦門冬湯は、一般的には服用開始から2日後〜1週間には効果が感じられるはずですが、効果が感じられない場合は漢方が体質に合っていないことが考えられます。
「効かない」と相談された場合、服用している期間やお客さまの体質などを伺い、服用中止など状況に応じたご案内を行いましょう。
Q. 麦門冬湯は長期服用もできる?
感冒症状への対症療法はあくまでも一時的なものです。
麦門冬湯も最長でも1カ月を目処に服用を中止しましょう。
漢方薬は体質に合う・合わないがあるため、個人の判断で長期服用することはおすすめできません。
一度にたくさんの市販薬を購入するお客さまや、長期服用希望の方に相談された場合は、その都度、医師や薬剤師、登録販売者に相談するように促してください。
麦門冬湯のポイントを押さえて案内しましょう
麦門冬湯は、喉に潤いを与えてコンコンとした咳を改善します。
禁忌となる飲み合わせはありませんが、カンゾウを含む漢方薬を服用している場合は、摂取量増加によって偽アルドステロン症のリスクが高まるため注意が必要です。
効果は比較的早く出ますが、1カ月経っても効果が感じられない場合は、漢方が体質に合っていない可能性があるため服用を中止して医療機関への受診を促しましょう。
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