著名人コラム
2023-08-04
【登録販売者2年目向け】ドラッグストアの店舗マネジメントとは?店長と店舗管理者の業務の違いや心構え、3つのポイント<薬剤師・村松早織先生が解説>
・Before
・After
登録販売者2年目の方の中には、キャリアアップの選択肢として店舗のマネジメントに興味をもち始めた方もいるのではないでしょうか。今回はそうした店長や店舗管理者を目指す方々へ向けて、薬剤師の村松早織先生にドラッグストアの店舗マネジメントについて教えていただきました。店長(店舗管理者)の仕事内容や役割の違い、心構え、事前準備、さらに3つの重要なポイントを詳しく解説します。
ドラッグストアの店長(店舗管理者)の仕事内容・役割とは?
店長の役割を一言で表すならば、「ヒト」「モノ」「カネ」の管理です。
法律で定める「店舗管理者」を兼務するケースが多く、「店長としての業務」と「店舗管理者としての業務」の2つの観点で、仕事に従事します。
店長と店舗管理者の業務には、以下のような違いがあります。
<店舗マネジメント業務の具体例>
店長としての業務 | 店舗管理者としての業務 | |
---|---|---|
「ヒト」の管理 | ●人員管理(シフト作成、業務指示) ●スタッフの採用・育成 | ●管理者要件に関するスタッフの管理・指導 ●身だしなみの管理 ●接客トークの法令順守 |
「モノ」の管理 | ●商品・在庫・発注管理 | ●商品の陳列・保管に関する法令順守 ●店内広告の法令順守 |
「カネ」の管理 | ●売上増加のための販売施策 ●人件費・経費などの管理 | ●販売方法に関する法令順守 |
次で、店舗管理者の業務について解説します。
(1)管理者要件に関するスタッフの管理・監督
登録販売者は、管理者要件を満たして初めて「正規の登録販売者」として働けます。
そのため店舗管理者には、「正規の登録販売者」を目指す一般スタッフや研修中の登録販売者に対し、実務・業務時間の管理や業務の管理・指導を行うことが求められるのです。
(2)身だしなみの管理
店舗販売業では、名札の着用が義務付けられており、衣服(白衣)についても資格者と非資格者などで区別を行うことが望ましいとされています。
そのため、会社のルールに沿ってスタッフの身だしなみのチェックを行うのも、店舗管理者の業務の一つと言えます。
▼参考サイトはコチラ
厚生労働省『「薬事法の一部を改正する法律等の施行等について」の一部改正について』
(3)接客トークの法令順守
スタッフの接客トークも管理の対象です。
口頭での接客は基本的に「広告」とみなされ、下記の通り法律によって規制されるため、お客さまへの伝え方にも配慮する必要があります。
- 医薬品医療機器等法
⇒虚偽・誇大広告や承認前の医薬品などの広告を禁止 - 景品表示法
⇒優良誤認表示や有利誤認表示を禁止
売上を伸ばすための施策として推奨販売品に力を入れている店舗も多くありますが、スタッフの接客トークが虚偽・誇大広告にならないよう、店舗管理者がしっかりと注意を払いましょう。
▼参考サイトはコチラ
厚生労働省『医薬品等の広告規制について』
(4)商品の陳列・保管に関する法令順守
医薬品は陳列ルールが細かく決まっているため、店舗管理者はルールに沿った売り場作りや陳列棚の管理を行わなくてはなりません。
たとえば医薬品は、ほかの物と区別して貯蔵または陳列しなければならないとされています。
また、第一類医薬品、第二類医薬品及び第三類医薬品は、混在しないように陳列しなければなりません。
こうしたルールを十分に理解し、適切な店舗運営を行わなくてはならないのです。
▼参考サイトはコチラ
厚生労働省『一般用医薬品の販売ルール等について』
(5)店内広告の法令順守
接客トークと同様に、店内に設置するPOPなども「広告」の一種です。
このような広告に関する知識の取得も店舗管理者の役割であると言えるでしょう。
とくに健康食品では違反事例が多いため、注視する必要があります。
過去には「血圧を下げる効果を謳っていたものの、実際は血圧を下げる効果の掲示については消費者庁から許可を得ていないものであった」という事例があります。
▼参考サイトはコチラ
消費者庁表示対策課食品表示対策室『健康食品の表示・広告の見方』
(6)販売方法に関する法令順守
「濫用等のおそれのある医薬品の販売」や「組み合わせ販売」など、医薬品ではその販売方法についてもさまざまなルールがあります。
売上を伸ばすための施策が法令違反とならないよう、客観的に判断するのが大切です。
とくに「カネ」の管理に関して、店長(店舗管理者)は人件費や経費の調整を行う際の、ブレーキの役割も担っていることを意識しましょう。
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店長(店舗管理者)に必要な心構え、事前準備
店長や店舗管理者になると業務内容が一新され、今までにない視点での仕事も増えます。
なってから慌てないよう、心構えや事前準備について理解しておきましょう。
【店長の心構え】コミュニケーション能力が重要
店長(店舗管理者)に必要な心構えとして、コミュニケーション力が重要であることを理解しておきましょう。
店長(店舗管理者)になると、スタッフに的確な指示を出し、ときには全員に協力を呼びかけるなどの店舗マネジメントを行うことになります。
さらに、通常の仕事とは別に、店舗での人間関係を調整するような場面も出てくるでしょう。
コミュニケーション力は少しの勉強で身につくものではありませんが、「人に何かを依頼するときの伝え方」や「スタッフの話を傾聴する方法」など、円滑なコミュニケーションについて日頃から意識するようにしてくださいね。
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【店長の事前準備】医薬品販売に関わる法律を復習しておく
店長(店舗管理者)になると、自分が中心となって法令遵守を推し進めていくことになります。
そのため、医薬品医療機器等法の内容を頭に入れておくことが重要です。
店舗管理者としての仕事は、登録販売者試験の第4章で学習した知識をフル活用します。
従って、第4章の復習は事前準備に必須であると言えるでしょう。
村松 早織 著 『薬機法暗記帳 医薬品登録販売者試験絶対合格! 「試験問題作成に関する手引き 第4章」 マンガとやさしく言い換えでよくわかる!』(金芳堂)

店舗マネジメントで求められる3つのポイント
店舗マネジメントを行ううえでは、主に次の3つが求められます。
- 店長(店舗管理者)の役割や立場を理解する
- 目標を設定する
- セルフメンテナンスを行う
次で、それぞれ詳しく解説していきます。
1.店長(店舗管理者)の役割や立場を理解する
店長(店舗管理者)はプレーヤーとしての仕事をこなしつつ、マネージャーとしての立場でスタッフに仕事を任せる役割を担います。
初めて指示を出す側の立場になると、「人に任せるよりも自分がやった方が楽だ」と感じてしまうこともあるでしょう。
しかし、自分がプレーヤーに徹してしまうと店舗全体を見る人がいなくなり、店舗運営にさまざまな問題が生じます。
忍耐強さをもち、「まずは任せてみる」「失敗したらフォローする」というスタンスでスタッフを見守り、成長を促してください。
人の育成には時間がかかります。
しかし、近い将来、自分の片腕となってくれることを期待して、「人に任せること」に慣れましょう。
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2.目標を設定する
最初からすべての業務をうまくこなすことは困難です。
まずは小さな目標を設定し、それをクリアしていくようにしましょう。
たとえば、以下のような具体的な目標がよいでしょう。
- 今月は推奨販売品の施策のうち、〇〇と△△の商品については必ず達成しよう
- 客単価を〇〇円まで上げよう
目標を達成するには、スタッフの協力が不可欠です。
上記の推奨販売品の例で言えば、目標をほかのスタッフに共有したうえで、自分がもっている推奨販売品の接客テクニックを盗んでもらいましょう。
そしてスタッフががんばっていたら、褒めるようにしてください。
言葉に出さないとわからないこともたくさんあるので、感謝の言葉はどんどん伝えます。
すると相手は「自分のことを見てくれている」と感じ、信頼関係の構築につながります。
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3.セルフメンテナンスを行う
店長(店舗管理者)になると、業務量に加え、考えるべきことが増えて忙しくなります。
「公休日も心が休まらない」「セルフメンテナンスが全くできていない」と感じている方も多いのではないでしょうか。
しかし、体や精神が休まらない状態が続くと、さまざまな不調が出現する場合もあります。
この原因となる不安を払拭するには、「店舗の人員体制を整える」「やるべきことを明確にしておく」ことが大切です。
その具体的な方法としては、次のようなものがあります。
- 自分の不在時に任せられるスタッフの育成
⇒クレーム対応やレジの故障など、緊急時の対応についても共有しておく - 十分な人員の確保
⇒急な欠員が出たときにも対応できるよう、可能であれば普段よりもシフトを厚めにしておく - TODOリストの作成
⇒自分の公休日に「達成してほしい目標」や「スタッフに任せたい業務」を書き出し、メモを渡すとともに前日までに口頭で伝える
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店舗マネジメントを理解し、思い描くキャリアアップを実現へ
店長(店舗管理者)は店舗マネジメントを行うとともに、法令順守に関する知識も不可欠です。
業務量や覚えることは増えますが、プレーヤーでは経験できない、スキルアップにつながる貴重な機会となるでしょう。
店長(店舗管理者)経験があると、転職市場でも有利になります。
上司から「店長にならないか」といった相談があった際には、メリット・デメリットをふまえ、ぜひ前向きに検討してみてくださいね。
【執筆者プロフィール】
執筆者:村松早織(むらまつ・さおり)先生
名城大学薬学部を卒業後、医療用医薬品卸売企業、大小のドラッグストアでの勤務を経て、2016年に株式会社東京マキアを立ち上げる。現在は登録販売者や受験生向けの講義を中心に事業を展開中。YouTubeの『やっけんちゃんねる』では、現在12,300人を超えるチャンネル登録者に向けて、市販薬やドラッグストア業界についての情報発信を行っている。
メディア出演実績として『NHKあさイチ「今こそ気をつけたい!身近な薬とのつきあい方」』、著書に『やさしくわかる! 登録販売者1 年目の教科書』(ナツメ社)、『医薬品暗記帳 医薬品登録販売者試験絶対合格! 「試験問題作成に関する手引き 第3章」徹底攻略』(金芳堂)、『これで完成! 登録販売者 全国過去問題集 2023年度版』(共著)(KADOKAWA)がある。

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