現場で役立つ知識
2025-02-07
【お店とスタッフを守る】ドラッグストアのカスハラ対策&登録販売者の心構え
・Before
・After
ドラッグストアでも発生する可能性がある「カスハラ(カスタマーハラスメント)」。万が一に備えて、登録販売者・店舗管理者として適切な対応ができるようにしましょう。今回は、登録販売者・店舗管理者向けにカスハラの対策や対処法を解説。カスハラに関する理解を深め、日々の店舗運営の参考にしてください。

カスハラとは?【基礎知識】
威圧的な言動や態度などを指します。
カスハラとは、「カスタマーハラスメント」の略です。
カスハラの例として、顧客からの理不尽なクレームや暴言、威圧的な言動などが当てはまります。
ドラッグストアにおいても、登録販売者やスタッフがこうした行為に晒されることが増えています。
たとえば、土下座の強要やスタッフへの罵倒などがよくあるカスハラ行為です。
カスハラが頻発すると、労働者の就業環境に悪影響をおよぼすため、適切な対策と対応が欠かせません。
厚生労働省の「カスタマーハラスメント対策企業マニュアル」では、カスハラを次のように定義しています。
引用:厚生労働省「カスタマーハラスメント対策企業マニュアル」
ドラッグストアのカスハラを防ぐ3つの対策はこちら
ドラッグストアでカスハラが発生した場合の対処法はこちら
カスハラとクレームの違い
カスハラ | 悪質ないじめや嫌がらせが目的 |
---|---|
クレーム | サービスの向上や品質の改善が目的 |
カスハラとクレームは、それぞれ目的が異なります。
クレームは、顧客が商品やサービスに不満を持ち、それを解決するための正当な意見や要望を伝える行為です。
店舗が提供するサービスを、よりよく改善するためのフィードバックとも言えます。
一方、カスハラは、顧客が従業員に対して過剰な要求をし、威圧や暴言を用いて圧力をかける行為です。
従業員の尊厳を傷つける行為であり、店舗全体に悪影響をおよぼします。
カスハラとクレームは内容が似ているため見分けがつかない場合もありますが、このように明確な違いがあることを把握しておきましょう。
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ドラッグストアのクレーム対応!よくある事例やポイントを解説
企業におけるカスハラの現状
「令和5年度 厚生労働省委託事業 職場のハラスメントに関する実態調査報告書」によると、過去3年間のカスハラの相談件数について、「増加している」と答えた企業は、「減少している」と答えた企業よりも多いという結果になりました。
企業規模が大きく、従業員数が多い企業ほど、相談件数も増える傾向が顕著です。
また、カスハラが多い業界として、ドラッグストアやファミレス、ホテルなど主にお客さまと接する機会が多い接客業が挙げられます。
カスハラ対策を行わないとどうなる?
起こりうるリスク |
---|
・従業員の健康に悪影響をおよぼし、離職につながる ・従業員の会社に対する信頼感が低下する ・会社の売上や評判が低下する |
カスハラを受けた従業員は、精神的・身体的な健康が損なわれ、結果として離職率が上昇する可能性があります。
「令和5年度 厚生労働省委託事業 職場のハラスメントに関する実態調査報告書」においても、カスハラによって「労働者の意欲やエンゲージメントが低下した」と回答した割合は61.3%にのぼりました。
また、従業員の会社に対する信頼感、会社の売上・評判の低下にもつながります。
さらに、店舗に不利益を与える情報が拡散されたり、職場全体の士気が下がったり、店舗運営に対する影響も大きいです。
カスハラ対策を講じることは、このような悪影響を防ぎ、店舗の健全な運営と従業員の安全を守るための大きな役割を担います。
ドラッグストアにおけるカスハラの具体例4選
実際にドラッグストアで起こり得る、カスハラの具体例を紹介します。
どのような行為がカスハラに該当するのか、しっかり確認しておきましょう。
執拗なクレームを繰り返し、長時間拘束される
商品やスタッフの対応に対して、執拗にクレームを言われ続ける行為はカスハラのひとつです。
正当な意見・主張であれば、通常のクレームに該当するケースもあります。
しかし、明らかに長時間拘束されている、業務に支障をきたすなどの場合はカスハラと言えるでしょう。
また、通常のクレームの場合は、長くても30分程度の時間で対応する場合が多いです。
これを超えるほど長い場合は、カスハラと判断できるためひとつの目安にしてください。
威圧的な言動や暴言を吐かれる
スタッフを脅したり圧力をかけたりする行為は、れっきとしたカスハラです。
また、罵倒や暴言を吐くなどもカスハラにあたります。
状況にもよりますが、とくに店舗が混み合う時間帯のレジや、対応に時間がかかってしまったときなどに発生する可能性が高いです。
威圧的な言動や暴言は、正当なクレームには該当しないため、カスハラと判断してよいでしょう。
業務とは無関係なセクハラ発言をされる
従業員に対して性的な発言をする、業務と無関係なプライバシーや個人情報に関わる質問を執拗にされる、などもカスハラに該当します。
よくあるのが、連絡先を聞かれるケースです。
このような行為は業務とは一切関係なく、悪質なカスハラと言えるでしょう。
また、直接ではなく電話越しに被害を受ける場合もあります。
人格や登録販売者の業務を否定される
スタッフ個人の人格を否定したり、登録販売者の仕事を否定したりする発言・行動もカスハラの一種です。
ドラッグストアに来るお客さまの中には、登録販売者に対する正しい知識がなく、「薬剤師からの医薬品説明を求められる」ケースもあります。
このようなお客さまには、登録販売者も薬のスペシャリストであることを伝えて、納得してもらうように努めましょう。
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ドラッグストアのカスハラを防ぐ3つの対策
ドラッグストアにおいてカスハラを防ぐための対策や、万が一発生してしまった場合の対応を解説します。
ドラッグストアで働いている方は、ぜひ参考にしてください。
カスハラ対応をまとめたマニュアルを作る
ドラッグストアの店舗・企業内で、カスハラが発生した場合に備えてマニュアルを作成すると効果的です。
カスハラが発生した際の対応手順や緊急時の連絡先、報告方法などを詳細に記載しましょう。
事前にマニュアルを全従業員で共有しておくことで、迷わずに適切な対応ができるようになります。
また、マニュアルは定期的に更新し、従業員への周知を徹底することが重要です。
カスハラに備えた対応の教育・研修を行う
マニュアルを軸にして、店舗内でカスハラ対応の教育や研修を定期的に実施するのも有効です。
全従業員が共通の認識を持ち、万が一の事態に落ち着いて対応できるようにしましょう。
また、教育や研修は従業員同士のコミュニケーションを活発にし、カスハラに対する情報共有を促進する効果も期待できます。
しっかり体制を整えて、積極的に対策を行いましょう。
注意を呼びかけるポスターを掲示する
店舗内に、注意喚起のポスターを掲示するとカスハラ防止に効果的です。
顧客に対して、カスハラが許されない行為であることを明確に伝えましょう。
ポスターを掲示する際は、「従業員への暴言・暴力は許されません」といった、シンプルかつストレートな文章だとわかりやすいです。
店舗の入口やレジ前など、できる限り目立つ場所に貼りましょう。
なお、厚生労働省はカスハラ対策の啓発ポスターを作成しています。
ドラッグストアにおけるカスハラ対策にも使えるため、活用するのもよいでしょう。
参考:厚生労働省「職場におけるハラスメントの防止のために(セクシュアルハラスメント/妊娠・出産・育児休業等に関するハラスメント/パワーハラスメント)」

ドラッグストアでカスハラが発生した場合の対処法
ドラッグストアでカスハラが発生した際は、以下のポイントを押さえて対処すると効果的です。
いざというときに焦らないよう、登録販売者として事前にしっかり把握しておきましょう。
終始冷静に毅然とした対応を心がける
万が一、カスハラが発生した際には、従業員は冷静に対応しなければなりません。
相手に釣られて感情的になったり、言動に振り回されたりしないよう、毅然とした態度で対応しましょう。
以下で対応のOK例とNG例を紹介するため、ぜひ参考にしてください。
【対応のOK例・NG例】
OK例 | NG例 |
---|---|
・落ち着いたトーンの声で、冷静に説明をする ・悪質なカスハラは犯罪行為であることを伝える ・マニュアルの手順どおりに落ち着いて対応する ・周囲のスタッフに状況を知らせる | ・萎縮して無言になる ・感情的になって言い返す ・その場しのぎの対応をする |
1人で対処しようとせず、上司に相談・報告する
自分がカスハラに遭遇したからといって、すべてひとりで解決しようとしないことが大切です。
店舗で定めている基本のマニュアルを軸に、上司や店舗管理者などを呼んで一緒に対応してください。
複数人で対応すれば、お客さまが落ち着いてくれるケースもあります。
ひとりで抱え込まず、周囲の人を頼ることも頭に入れておきましょう。
事例を共有して同じ繰り返しがないよう改善する
カスハラやクレームの事例を店舗内で共有し、従業員の対応力を高めるために活用すると効果的です。
定期的なミーティングや報告会を通じて、実際に発生した事例を報告しましょう。
その際に、どのような対応をしたかを共有すると、同じケースが起きたときに役立ちます。
今後同じ例を繰り返さないために、より適切な対応ができるよう工夫しましょう。
声かけや業務への取り組み方で見直せる点がないか考える
今後カスハラを防ぐ方法として、自身の業務への取り組み方を見直す方法もあります。
たとえば、レジ対応の正確性やスピードアップを目指したり、お客さまの様子に応じて声かけの仕方を変えてみたりするとよいでしょう。
業務への取り組み方を変えると、お客さまの満足度向上やお店の信頼性アップにもつながります。
カスハラの防止以外にもさまざまなメリットがあるため、積極的に改善に取り組みましょう。
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【店舗管理者向け】ドラッグストアのカスハラ対応の心構え
- スタッフの心のケアに注力する
- カスハラの発生について本社と連携をとる
- マニュアルや対応の見直し・改善を行う
- 必要に応じて法的措置や外部機関との連携も検討する
ドラッグストアの店舗管理者の場合、カスハラへの自身の対応だけでなく、従業員のケアや店舗の整備なども求められます。
とくに、カスハラを受けた従業員は、想像しているよりも心身のダメージが大きいです。
「つらかったね」「もう大丈夫だよ」と声かけをし、心のケアを徹底してください。
また、事例を本部・本社に共有し、支援やアドバイスを受けることで、一層効果的なカスハラ対策につながります。
カスハラが悪質な場合は、本社と連携したうえで、必要に応じて警察や弁護士などの専門家の助けを借りることも検討しましょう。
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ドラッグストアの登録販売者は毎日お客さまと関わるため、カスハラに遭遇する可能性もあります。
カスハラが発生した際は、冷静に毅然とした対応に努めましょう。
ひとりで抱え込まずに、周りのスタッフに協力してもらうことも大切です。
店舗管理者の場合は、スタッフの心のケアやマニュアルの整備・見直しなど、店舗全体を守る行動が求められます。
カスハラの例や対策・対処法を理解し、適切な行動を目指しましょう。
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【執筆者】
チアジョブ登販編集部
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