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2025-08-01
小児用ジキニンを大人が一気飲みする危険性は?不適正使用のリスクや防ぐ方法を登録販売者向けに解説
・Before
・After
「小児用ジキニンを大人が一気飲み」することは医薬品の不適正使用にあたり、予期せぬ副作用が生じる可能性があります。登録販売者は医薬品の不適正使用防止に努め、接客の工夫や売り場環境を整えることが必要です。今回は、医薬品の不適正使用によって起こるリスクや危険性、登録販売者として適正使用をご案内する方法をご紹介します。
小児用ジキニンを大人が一気飲みしてもいい?
「小児用ジキニンを大人が一気飲みする」ことは、一般用医薬品の「不適正使用」にあたるため、お客さまにおすすめしてはいけません。
小児用ジキニンは本来、対象年齢の子どもが使用する目的で販売されています。
大人が使用した場合、予期せぬ重篤な副作用が生じる可能性や、症状の悪化・見逃し、病状の長期化といったリスクに加え、薬物依存や濫用につながるおそれもあります。
もし、このようなお客さまが見られた場合は、必要に応じて大人向けの適切な医薬品を提案しましょう。
登録販売者には、お客さまに医薬品使用のリスクを丁寧に伝える力や、代替案をわかりやすく提案する力が求められます。
そのためには、接客の工夫や売り場環境を整えることも重要です。
【小児用ジキニンを大人が使用する危険性】
- 予期せぬ重篤な副作用を招くおそれ
- 症状の悪化・見逃し、病状の長期化の可能性
- 薬物依存や濫用につながるおそれ
一般用医薬品の「不適正使用」とは
一般用医薬品の添付文書に記載がある用法・用量、および使用上の注意に従わない服用方法は「不適正使用」にあたります。
長期間の使用や大量服用、対象年齢を守らない使用、別の用途での自己判断による使用も不適正使用に該当するケースです。
とくに、「濫用等のおそれのある医薬品」は薬物依存のリスクが高いため、より一層お客さまに適正使用を促すことが求められます。
登録販売者は、「小児用ジキニンを大人が一気飲みする」といった事例に限らず、一般用医薬品全般の不適正使用防止に努める必要があります。
【一般用医薬品の不適正使用にあたる主なケース】
- 用法・用量や使用上の注意を守らない服用
- 長期間の使用
- 大量服用
- 対象年齢を守らない使用
- 自己判断による別用途での使用 など
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小児用薬だけじゃない!一般用医薬品の不適正使用のリスク
小児用薬を大人が使用することだけでなく、本来の用途以外で薬を使用し用法・用量を守らない行為は、「不適正使用」にあたります。
では、どのようなリスクや問題があるのでしょうか?
ここでは、不適正使用によるリスクや危険性について順番にご紹介します。
医薬品副作用被害救済制度を利用できないおそれがある
添付文書に記載されている用法・用量、および使用上の注意に従わずに使用した場合、不適正使用とみなされて救済制度の対象外となることがあります。
薬の副作用は、正しく使用していても誰にでも起こりうるものです。
そのため、国の制度として「医薬品副作用被害救済制度」が設けられており、重篤な副作用が生じた場合には、医療費や年金などの給付が行われます。
しかし、不適正使用とみなされると、救済制度の対象外になる可能性があります。
万が一、不適正使用により副作用が発生した場合には、重度の障がいや経済的な負担が大きくなるおそれがあるので注意が必要です。
参考:独立行政法人 医薬品医療機器総合機構「医薬品副作用被害救済制度」
副作用が生じる可能性が高まる
用法・用量および使用上の注意事項を守らずに医薬品を使用すると、特定の成分を過剰摂取してしまい、身体に負担をかける可能性があります。
子ども用の医薬品だからといって、効果が弱いわけではありません。
「小児用ジキニン」のように、子ども向けに設計された薬を大人が一気飲みをするといった不適正使用を行った場合、健康へ悪影響を及ぼすおそれがあります。
成分の相互作用によっては、思いもよらない重篤な副作用が生じる可能性もあります。
「濫用等のおそれのある医薬品」は依存性を招く
「濫用等のおそれのある医薬品」は2023年に指定範囲が拡大し、小児用ジキニンなどの総合かぜ薬にも含まれるメチルエフェドリンも対象となりました。
そのほか、エフェドリン、コデイン、ジヒドロコデイン、ブロモバレリル尿素、プソイドエフェドリンも該当します。
これらの成分は、不適正使用により依存性を引き起こす可能性が高いものです。
依存が形成されると薬の効果は薄れ、より多くの量を求めて使用してしまう副作用や健康被害が拡大するおそれがあります。
【濫用等のおそれのある医薬品】
- メチルエフェドリン
- エフェドリン
- コデイン
- ジヒドロコデイン
- ブロモバレリル尿素
- プソイドフェドリン
出典:厚生労働省『「医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律施行規則第十五条の二の規定に基づき濫用等のおそれのあるものとして厚生労働大臣が指定する医薬品」の改正について』
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【接客編】登録販売者が医薬品の不適正使用を防ぐ方法
医薬品の不適正使用のおそれがあるお客さまへの対応に、とまどった経験はありませんか?
ここでは、対応方法に悩む場面で役に立つ具体的な声のかけ方や、対応時に心がけたい振る舞いについてご紹介します。
「医薬品副作用被害救済制度」について説明する
単に「正しい使い方ではないこと」や「副作用のリスク」についてお伝えするだけでは、自己判断で使用してしまうお客さまもいらっしゃるかもしれません。
不適正使用のおそれがある場合にはやわらかく丁寧な口調を心がけながら、「医薬品副作用被害救済制度」について説明してみましょう。
お客さまの不安や悩みに寄り添いながらも、万一のための国の救済制度があることや、救済制度の対象外になると経済的なデメリットがあることについてご理解いただくことが大切です。
【お客さまへの声かけ・対応の例】
- 「ご不安な症状があると少しでも早く効いてほしいと感じますよね。 ただ、正しい使い方をしないと救済制度が適用されない可能性があるんです。」
- 「医薬品副作用救済制度についてはご存知ですか?自己流の使い方をされている場合、制度の対象外になる可能性がありますのでご注意ください。」
お客さまにとってのデメリットやリスクを伝える
医薬品の不適正使用は、十分な効果が得られないばかりだけではなく、健康被害を引き起こすリスクが高まります。
重大な副作用が生じた場合でも、不適正使用であれば医薬品副作用被害救済制度の対象外となり、重い障がいや治療のための莫大な経済負担を抱える可能性があります。
そのため、「どのようにご利用されますか?」といったお声がけを行い、はじめからお客さまのことを否定しないよう心がけることが大切です。
お客さまの訴えをしっかり受け止め、代替案をご提案するきっかけにもつながります。
【お客さまへの声かけ・対応の例】
- 「もし、正しい使い方をしていない場合に起こりうるリスクについては、ご存じですか?」
- 「どのようにご使用になる予定か、よろしければお聞かせいただけますか?」
- 「どのような症状でお困りか、差し支えなければ詳しくお伺いできますか?」
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お客さまの年齢や症状に適した別の医薬品を案内する
お客さまの年齢や症状に合う医薬品を提案するために、丁寧なヒアリングをすることが登録販売者の重要な役割です。
「どのようなことでお悩みですか?」といったお声がけをしたり、お客さまが不安に思っていることを繰り返して確認したりすることで、「きちんと話を聞いてくれている」と感じていただけるでしょう。
登録販売者としての知識と経験を活かし、適切な医薬品を提案していくことが求められます。
【お客さまへの声かけ・対応の例】
- 「どういったことでお悩みですか?お話をお聞かせいただけますか?」
- 「普段どのようなお薬を飲まれていますか?」
- 「このようなことがご不安なんですね。お気持ちよくわかります。」
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必要に応じて受診推奨を行う
症状が長引いたり、重篤であったりする場合は医療機関への受診勧奨も大切です。
医薬品だけでは対応が難しい場合には、医師の診察を受けていただく必要があります。
「症状のご様子はいかがですか?」といったお声がけをしながら、お客さまの訴えを否定せずに共感の気持ちを持って傾聴する姿勢が重要です。
お客さまとの信頼関係を築き、健康を守ることにつながります。
症状の原因が訴えの中だけにあるとは限りません。
受診推奨は、適切な検査と医師の診断を受けることを目的としています。
【お客さまへの声かけ・対応の例】
- 「症状のご様子はいかがでしょうか?」
- 「何日間かお薬飲まれていたとのことですが、症状に変化はありましたか?」
- 「気になる体調の変化はありますか?」
【環境編】登録販売者が医薬品の不適正使用を防ぐ方法
売り場でのちょっとした工夫も、医薬品の不適正使用を防ぐことにつながることをご存じですか?
ここでは、登録販売者が日々の業務の中で意識したいポイントについてご紹介します。
売り場内で商品の陳列方法を工夫する
不適正使用の可能性がある医薬品については、売り場での陳列方法の工夫が重要です。
たとえば、陳列棚に空箱を置き、購入時には必ずスタッフへ声をかけていただく形式にする方法や、鍵付きのケースやアクリルカバーを設置して商品を簡単に取り出せないようにする方法があります。
また、登録販売者が常駐するカウンターのすぐ近くに配置し、相談しやすい環境を整えるのも効果的です。
「おひとりさま1点まで」といった注意喚起も表示すると、より適切な販売につながります。
【陳列方法の工夫の例】
- 陳列棚に空箱を並べる
- 鍵付きケースの中に医薬品を配置する
- 購入数を限定するPOPを掲示する など
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医薬品の不適正使用を注意喚起するポスターを掲示する
医薬品が不適正使用されないように、注意喚起を促すポスターやPOPを掲示するのも有効な方法です。
とくに「濫用等のおそれのある医薬品」については、厚生労働省が通知しているポスターを活用し、店内での掲示が推奨されています。
レジ横や会計待ちのスペースなどお客さまの目にとまりやすい場所に掲示し、見出しは大きく重要なキーワードは赤文字にするなど、一目で内容が伝わる工夫が必要です。
注意喚起のポスターやPOPは、お客さまと会話を始めるきっかけにもなります。
【店舗管理者向け】職場内で事例を共有しやすい体制を整える
店舗管理者の方は、職場内の雰囲気づくりや体制の強化にも目を向けてみましょう。
たとえば、「小児用ジキニンを大人が一気飲みする」といった不適正使用の事例が起きた際に、スタッフ同士が情報を共有したり、相談したりできる環境を整えることが大切です。
とくに、登録販売者としての経験が浅いスタッフには、具体的な声のかけ方や実践的な指導、フォローの工夫を行いましょう。
より安心して働ける職場づくりにもつながります。
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登録販売者として「ただ売る」から「正しく届ける」を目指そう
「小児用ジキニンを大人が一気飲みする」事例に限らず、医薬品の不適正使用を防ぐためには、お客さまに適した情報提供や相談対応がとても重要です。
登録販売者の声かけや売り場づくりの工夫が、お客さまの健康と安心を支える一歩となります。
正しい知識と丁寧な対応は信頼される接客につながるだけでなく、働きやすい職場にもつながるでしょう。
「もっとお客さまに寄り添える環境で働いてみたい」と感じている方は、思い切って職場を変えてみるという選択肢もあります。
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【執筆者】
チアジョブ登販編集部
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